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安倍元首相死去 被災地に寄り添い、石巻地方視察7回 「励ましうれしかった」

東松島市の震災遺構「旧野蒜駅」で武山さん(左端)ら語り部と懇談する安倍首相(当時、左から3人目)=2018年8月

 「東北の復興なくして日本の再生なし」と訴えて東日本大震災からの復興を指揮した安倍晋三元首相が8日、奈良市内で銃撃され、死去した。7年8カ月に及んだ第2次政権中は石巻地方を繰り返し訪れ、被災地に寄り添う姿勢を見せた。

 安倍元首相が被災地視察で石巻地方を訪れたのは、2度目の就任翌月の2013年1月から18年8月までの計7回。最後の機会となった18年は石巻、東松島両市で多くの住民と接した。

 東松島市で被災し、語り部活動を続ける東京福祉大4年武山ひかるさん(21)は津波に遭った体験を直接伝えた。昨年、友人の震災経験を描いた絵本を送ると、「読ませてもらいました」と返事が届いたという。「優しい人だと思った。激励の言葉をもらいうれしかった」と振り返った。

 「すごく柔らかい手だった」と懐かしむのは石巻市南境の仮設住宅で交流した高橋律子さん(73)。事件を聞いた当初はただ驚いていたが、マッサージし合った手のひらの感触が急によみがえったという。「思い出したらすごく悲しくなった。こんな事件は絶対に許されない」と嘆いた。

 視察を受け入れた東松島市赤井の農業法人イグナルファームの佐藤雄則社長(51)は「自身の目で見に来てくれたことが心強かった」と思い起こす。「新規事業や規模拡大を制度面で後押ししてくれ、被災後の混乱期から会社を軌道に乗せる上で大いに助かった」と感謝した。

 石巻市の斎藤正美市長もコメントを出し「被災者の声に耳を傾け、寄り添ってもらった。復興が完結した石巻市を見てもらいたかった」と悼んだ。

 安倍元首相は復興予算を大幅に拡充し、被災地の住宅再建やインフラ整備を後押しした。一方で、経済政策「アベノミクス」の恩恵は実感に乏しかった。復興相の被災者を傷つける発言も相次ぎ、任命責任を問われた。

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