北上・金ケ崎の大自然、電動自転車で駆け抜ける サイクリングツアーに記者が同行

 岩手県の内陸中部にある北上市と金ケ崎町。半導体や自動車産業の巨大工場など産業集積が加速する中心部から少し足を延ばすと、景色は広大な田園地帯と牧草地に様変わりする。大自然を風のように駆け抜けてみたい。そんな望みをかなえてくれるサイクリングツアーに先月同行した。(北上支局・江川史織)

見渡す限りのデントコーン畑を背景に自転車をこぐ参加者=7月18日、岩手県金ケ崎町

 主催したのは北上市のアクティビティー企画「北上巣箱」。同市和賀町の「夏油古民家カフェ小昼」を発着点に、史跡や温泉地、草原を巡る30キロのコースを3時間で走る。

 電動アシスト付きスポーツバイク「e-bike」を使う。「坂道も楽々。老若男女問わず参加できる」と北上巣箱代表の深津咲奈さん(32)。体力に自信のない記者にとって、頼もしい助っ人だ。

 杉林を進むこと約4・5キロ。金ケ崎町との境目に、高さ1・2メートルほどの土盛りが現れる。盛岡、仙台両藩の境界を示す国指定史跡「南部領伊達領境塚」だ。

 50余年の領地争いの末、1642年、東西130キロに及ぶ藩境上に点々と築かれた。一帯は日本有数の穀倉地帯。せめぎ合う無数の塚は、土地を巡る両藩の思惑と執念が、そのまま塊になったように映る。

 この日の気温は30度。したたる汗をぬぐいながら、ペダルをこぐ。千貫石温泉付近では、見頃のアジサイとハスの花がお出迎え。かれんに咲く天然の「エイドステーション」で、疲れを癒やした。

一行を出迎えるように咲いていたアジサイと戯れる深津さん=7月18日、岩手県金ケ崎町

 山麓地をさらに分け入ると、和光地区の牧草地帯に突入だ。戦後、旧満州(現中国東北部)から引き揚げた入植者が切り開いた。

 デントコーン畑がどこまでも広がり、牛がゆったりと草をはむ。北海道の大地を彷彿(ほうふつ)とさせるスケール感だ。電動アシストのレベルを上げて、丘陵地を駆け上がった。

 長い坂道を一気に下り、ぐんぐんと加速。真夏の日差しや草木の匂い、セミの声。全てが溶け込んで感覚に訴えかける。時速40キロの最高潮に達した瞬間、体がふわりと浮き風と一体化したような錯覚を覚えた。

 「難しいことを考えずに、自然を体感してほしい」と深津さん。世界を覆う暗い世相も「どこ吹く風」とおおらかに渡る青田風は、沈んだ気持ちもきれいに吹き飛ばしていった。

[メモ]ツアーは4~11月に随時開催。北上巣箱に申し込み、日程を決める。最少催行人数は2人。記者が参加したコースの料金は5500円。ほかに湧き水や石碑を巡り土地の成り立ちを学んだり、北上市の特産品「二子さといも」を収穫して芋の子汁を作ったりするコースがあり、料金は異なる。連絡先は深津さん070(1262)4446。

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