<創作現場/私の相棒>「たがねと金づち」 命吹き込み立体感創出

 画家の絵筆やペインティングナイフ、小説家の万年筆、声楽家ののどあめ…。創作・表現活動に携わる人は、活動に欠くことのできない愛用の道具、いわば「相棒」を必ず伴っています。宮城県内の創作・表現者を訪ねて、作品論や創作上の苦労話などを紹介しながら「相棒」に寄せる思いを聞きました。

リズミカルにたがねと金づちを操る八重樫さん。やすりをかけて面取りし、漆を塗って仕上げる

仙台箪笥金具職人・八重樫栄吉さん

 ぎょろりとした目に、量感のある胴体、ごつごつした指に鋭い爪。ひげは柔らかな曲線を描き、雲の質感は優しい。仙台箪笥(たんす)の金具職人八重樫栄吉さん(86)=仙台市若林区=が鉄板を打ち出して作った竜の飾り金具は躍動感にあふれ、生命を宿しているかのようだ。

 「遠くから見ても浮いてくるように立体感を出す。もう少し盛り上げたい、と体が動く」。八重樫さんが話す。

 作業を見せてもらった。カンカンカーン、カンカンカーン。小気味いい音を響かせながら、たがねと呼ばれる工具を金づちで鉄板に打ち付ける。「リズムがあるんだっちゃ。1回ずつボン、ボンとしたんでは腕が疲れる。身が入っているかどうか、音で分かる」

 輪郭線を彫る、模様を付ける、裏から打ち出して膨らみを出す…。たがねは用途に応じて多様な形状があり、竜、唐獅子、ボタンといった模様によっても変える。その数およそ1300本。金づちも20本ほどを使い分ける。

 いずれも鋼を熱し、たたいて自分で作った。注文に応じて新たなデザインに臨む際は、たがねも新たに作る。「道具作りが仕事の基本。一番大事なの。うまく作れれば、品物もうまく作れる」と説く。

 祖父、父、兄に続く4代目。コックを経て20歳で金具職人の道に入り、ふいごで火をおこしての道具作りといった鍛冶仕事から修業を始めた。

 金具製作のどの工程も、ミスは許されない。鉄板の延びや狂いを読んで手順や場所を見定め、力を加減する。長年の経験と「目勘(めかん)」が頼りだ。鋳造やプレス加工で仕上げた金具を付けた品も流通するが「気持ちが入っているから、箪笥に付けたときが違う」と手仕事に誇りを持つ。「仕事は楽しいよ。届けると必ず喜んでくれる」と相好を崩した。(生活文化部・丸山磨美)

八重樫さんのたがねと金づち。1本の曲線を彫る際も、先端の刃の部分の形や大きさが異なるたがねを何本も用いる

[メモ]仙台箪笥は指し物、漆塗り、金具製作の専門の職人による分業制。八重樫さんは自身が営む八重樫仙台タンス金具工房で注文を受けている。八重樫さんは10月22日と11月3日、仙台市宮城野区の市歴史民俗資料館の「れきみん秋祭り」で金具製作を実演する。

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