河北春秋(9/23):吉行淳之介の短編『未知の人』はこんなくだ…

 吉行淳之介の短編『未知の人』はこんなくだりで始まる。「たとえば私にとって、どんな人間でも、なにかのキッカケで知り合うまでは、未知の人である。(中略)未知の人が未知でなくなるその一線には、言うに言われぬ摩訶(まか)不思議なところがある」▼摩訶不思議の範疇(はんちゅう)に入るのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、2018年7月から21年6月までに結婚した夫婦の13・6%は、交流サイト(SNS)やマッチングアプリなどインターネットで知り合ったという▼日本世論調査会の6、7月の調査でも、アプリや婚活サイトの利用について「どちらかといえば」を含めて「良いと思う」が56%に上った。特に30代以下では男女とも70%超が肯定的だった▼コロナ禍での出会いの減少や手軽さが要因らしい。結婚相手を探す手段として浸透してきたようだが、詐欺やトラブルも起きている。1959年の『未知の人』でも、「私」が見知らぬ人間からの一方的な手紙に返信したばかりに不愉快な目に遭う▼アプリで婚活するシニアも増えている。専門家は「モデルのような20代の美女が60代の男性にアプローチする…。現実でまず起こらないことはアプリ上でも起きません」。人は不思議な縁で結ばれる。不自然な縁には要注意。(2022・9・23)

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る