発掘!古代いしのまき 考古学で読み解く牡鹿地方>番外編 発掘された日本列島2022展と毛利コレクション(下)

大正11年5月9日、小野村(現東松島市小野)の川下り響貝塚調査で見つかった人骨(石巻市博物館提供)
沼津貝塚発掘現場での集合写真=昭和4年6月23日(石巻市博物館提供)
南境貝塚の出土土器(石巻市博物館提供)
群馬県出土の馬形埴輪(石巻市博物館提供)

【東北学院大博物館学芸員 佐藤敏幸氏】

<丁寧な調査、研究者が光>

 石巻市博物館で「発掘された日本列島2022-調査研究最前線-」という特別展の開催に合わせ、市博物館独自に企画した地域展として「毛利総七郎・遠藤源七の考古コレクション-明治・大正・昭和戦前期の発掘と蒐集(しゅうしゅう)-」が開催されています。特別展は9月17日(土)から10月23日(日)まで、地域展は11月6日(日)までです。

■重要文化財も

 地域展で公開される資料は「毛利コレクション」のうちの考古資料で、明治時代から昭和初期にかけて毛利総七郎と遠藤源七が稲井の沼津貝塚や南境貝塚、東松島市小野の川下り響貝塚など石巻周辺の遺跡を私財をなげうって発掘調査して集めたものや、静岡県や群馬県の古墳から出土した銅剣や埴輪、須恵器を購入したもの、宮城県内の蒐集家から譲渡されたりしたものです。

 今回の地域展で私が注目している展示品の一つは東北大学蔵の重要文化財を含む「陸前沼津貝塚出土品」です。この資料は元々毛利と遠藤が発掘調査した沼津貝塚出土品でした。共同管理者であった遠藤が昭和36(1961)年に亡くなった後、東北大に譲渡されました。石器や土器、骨角器(こっかくき)、貝製品、土偶など、その点数は何と2219点にも及んでいます。そのうち473点が昭和38(1963)年7月1日に国の重要文化財として指定を受けました。石巻市に譲渡されていれば市の宝になっていたことでしょう。それらの出土品が“里帰り”して石巻で展示されているのです。この資料を見る機会はなかなかありませんから見逃せません。

■最新の技術採用

 毛利総七郎は、いつ頃から考古学に興味を持ったのでしょうか。毛利は明治40(1907)年に塩釜で多数の鏃(やじり)を採集したのを皮切りに遺跡に出かけるようになり、明治42(1909)年に遠藤と沼津貝塚を訪れ石鏃(せきぞく)、石斧(せきふ)、土偶を採集・発掘しました。その後、昭和5(1930)年まで沼津貝塚を幾度となく発掘調査していきます。その間、石巻市南境貝塚、寶ケ峯遺跡、東松島市川下り響貝塚、高松貝塚、野蒜亀岡遺跡などの発掘も行っています。特に縄文時代の人骨が出土した川下り響貝塚では東北帝大の松本彦七郎や長谷部言人らに連絡を取り譲渡しています。

 私が驚いたのは発掘を始めた頃からすぐに「考古学会」「東京人類学会」「仙臺考古會」の学会に入会して調査に当たっていることです。発掘もめったやたらに掘り散らかすのではなく、当時の最先端の発掘調査法を取り入れ、トレンチと呼ぶ方形の調査区を設定してその中を掘り下げ、詳細な記録を書き残しています。丁寧な調査・整理をしたからこそ東北帝国大学、東京帝国大学や著名な研究者がこぞって資料を見に来たのでしょう。

■蔵に史料ずらり

 私が初めて「毛利コレクション」を見たのは昭和60(1985)年、大学3年のことです。この頃、石巻広域の博物館・文化施設として「石巻文化センター」が南浜町に建設されることになり、石巻文化センター開館準備室(仮称)が設置されました。私は開館準備室の中心的存在だった中村光一さんから連絡を受け、お手伝いをすることになりました。石巻地方の歴史資料悉皆調査の一環で「毛利コレクション」の調査に行ったのです。考古資料は毛利家の中庭の蔵に納められていました。蔵の入り口には馬形埴輪(うまがたはにわ)が「ほんとに本物?」と疑うほど無造作に立っていて、足元は少し緑色のコケが付き始めていたのを覚えています。蔵の中はガラス戸と引き出しがたくさんあって、その中にこれまで見たことのないほどの土器や石器、釣り針、銛頭(もりがしら)、骨(こつ)ヘラなどの骨角器(こっかくき)が出土地や出土年が記載されたラベル付きで収納してありました。それを1点ずつスケッチしながら調査カードをしていきました。これが教科書に載っている沼津貝塚出土品だと思うとワクワク感でいっぱいでした。

 今回の石巻市博物館の「地域展」は「毛利コレクション」の考古資料や当時の書簡を251点も一度に見ることができる絶好の機会です。再びワクワク感がよみがえります。

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