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発掘!古代いしのまき 考古学で読み解く牡鹿地方>番外編 発掘された日本列島2022展と毛利コレクション(上)

毛利総七郎(昭和8~9年頃、石巻市博物館提供)
毛利宅に昭和7年に建設された「石巻考古館」の様子(石巻市博物館提供)
群馬県から蒐集した埴輪(石巻市博物館提供)

【東北学院大博物館学芸員 佐藤敏幸氏】

<貴重な史料、地元で公開>

 今回と次回は石巻地方の発掘に関係する番外編です。

■最新の調査発表

 9月17日(土)から10月23日(日)まで石巻市博物館で「発掘された日本列島2022-調査研究最前線-」という特別展が開催されています。「発掘された日本列島」展は平成7(1995)年から毎年開催されている展覧会で、28年目になります。過去には2009年に東松島市赤井官衙(かんが)遺跡群(赤井官衙遺跡と矢本横穴)、2021年に石巻市五松山洞窟(ごしょうざんどうくつ)遺跡が取り上げられて巡回しました。

 日本では毎年約8000件の発掘調査が行われていています。そのうち近年発掘調査された遺跡や調査成果がまとまった遺跡の中から注目される遺跡が15件前後選ばれ、速報的に公開される展覧会です。集められた資料は全国5、6ケ所の博物館を巡回して開催されています。今年はさいたま市の博物館を皮切りに北海道伊達市、石巻市、宮崎市、奈良県天理市所在の5カ所の博物館を巡回します。そのうちの一つが石巻市博物館です。出品される資料も旧石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代、古代、中世、近世、近代と各時代にわたっています。

 石巻市博物館が東北地方で唯一の開催地ですから、東北各地の歴史・考古学愛好家、学生、研究者のみならず、居住地近くの展示会場に行けなかった全国の考古ファンが観覧に来ることでしょう。こんなに近くの会場で開催されることはめったにないので、ぜひ日本の歴史の最前線を見に石巻市博物館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

■私財投じて収集

 「発掘された日本列島」展は特別展として5カ所の博物館を巡回しますが、会場となる博物館では遺跡に関連する「地域展」を独自に企画して開催しています。石巻市博物館では「毛利総七郎・遠藤源七の考古コレクション-明治・大正・昭和戦前期の発掘と蒐集(しゅうしゅう)-」と題する地域展が開催されています。毛利総七郎といえば、沼津貝塚や南境貝塚などの考古資料や北海道のアイヌ民族資料、古鏡、刀剣、簪(かんざし)、古文書、マッチラベルなど10万点を超える「毛利コレクション」を蒐集した人物です。

 「毛利コレクション」のうち考古資料は明治時代から昭和初期にかけて、毛利総七郎と遠藤源七が稲井の沼津貝塚や南境貝塚、東松島市小野の川下り響貝塚など石巻周辺の遺跡を私財を投げ打って発掘調査して集めたものや静岡県や群馬県の古墳から出土した銅剣や埴輪、須恵器を購入したもの、宮城県内の蒐集家から譲渡されたりしたもので、2人の共同管理のコレクションでした。

 それらは毛利家に建てられた「石巻考古館」にきれいに整理されて収蔵・展示され、県内の研究者や愛好家をはじめ東京方面の著名人や研究者も足を運んで研究する対象となったのです。

 今回の地域展では蒐集した考古資料はもちろんのこと発掘調査時の日誌や写真も展示され、当時の蒐集家仲間や東北大、東京大の教授らとの書簡も見ることができ、毛利コレクションの蒐集過程を知ることができます。

■文化財が里帰り

 地域展に出品される主な資料は東北大学蔵の重要文化財を含む「陸前沼津貝塚出土品」、石巻市に寄贈された毛利コレクションから登米市「中津山網場貝塚出土岩版(がんばん)」(重要文化財)、「アイヌ資料銛」(石巻市指定文化財)、石巻市「南境貝塚出土遺物」、東松島市「小野川下り響き貝塚出土遺物」、大崎市「日光山古墳出土四獣形鏡」、群馬県出土「埴輪」や東京の図案家で考古学・民俗学研究者の杉山寿栄男(すえお)、東北帝大の松本彦七郎、山内清男(やまのうちすがお)、東京帝大の長谷部言人(ことんど)らの書簡ほか多岐にわたります。特に東北大蔵の沼津貝塚出土品は土器、土偶、岩版、骨角器など重要文化財を含む100点余りが出土地の石巻に里帰りして公開されるのです。

 普段は決して見ることのできない石巻出土品をまとめて見る機会は今回限りかもしれません。見逃せないチャンスです。

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