いしのまき食探見>すし ネタの宝庫、光る職人技
海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。
す し
シンプルで見栄えが良くヘルシーな和食として海外でも人気のすし。「すしのまち」と言われる石巻は金華山沖の好漁場から取れる多種多様な海の幸の恩恵を受け、「すしがおいしい」と地元の人に限らず、観光客や仕事で県外から訪れた人から評価は高い。
「石巻はすしネタの宝庫だ」
JR石巻駅前で営業する「富喜寿司(ずし)」代表で、石巻寿司業組合の元組合長大場英雄さん(77)は、こう言い切る。
すしネタはどれくらいあるのだろう。寿司店にもよるが、大場さんの店では旬の食材をメインに25~30種類そろえている。金華サバは、秋から魚体が大きくなり脂が乗る。毛ガニやシャコエビは近海で取れる石巻産。カニみそは酒のつまみや握りに使われる。
一推しのメニューはウニ、アワビなどの高級食材や地元の幸を堪能できる「おまかせ握り」(3500円)。観光客などから1番人気のメニューだ。
アワビは禁漁中のため取材した日は登場しなかったが、ウニ、イクラ、アカガイ、女川港に水揚げされたサンマ、マグロ(中トロ)、ヒラメ、クジラ、アカエビ、シャコ、アナゴの10貫と卵焼きがバランス良く皿に並べられた。
熟練の技が光る和食の芸術。彩りの豊かさを楽しみながら頂く。新鮮サンマの握りの食感の良さとうまさが脳裏から離れなかった。
握り以外のメニューでは「漬(づ)け丼」という丼物があるのを初めて知った。ワサビじょうゆに入れて混ぜてまろやかな味にした10種類のネタの上にウニや筋子が天盛りでのっている。
しゃりにもこだわる。ササニシキを使い、酢と塩、砂糖の割合に気を配る。食べている時の口当たりの良さは微妙な酢加減がものをいう。
「お客さんに喜んでもらいたい一心で握る。そして接客が大事」。大場さんの仕事の流儀が口当たりが良くておいしいすしを生み出しているように感じた。
(浜尾幸朗)
<メモ>
すしと言えば、にぎりずしやいなりずし、かっぱ巻きや鉄火巻きといった巻物、旬のネタを扱う海鮮丼、マグロがふんだんに入った丼物などがある。石巻のすし店では金華サバの握りが入ったメニューも登場、観光客などに好評だ。業界関係者によると、石巻地方では東日本大震災後、約30店のすし店が営業する。