色彩模様いしのまき<黒>原石、職人技で深み増す 雄勝石(石巻市雄勝町)
木立の間から降り注ぐ日差しが、石肌の濃淡を強調する。石巻市雄勝町波板地区の採石場跡。雄勝石と呼ばれる玄昌石の壁が所々角張り、山中に切り立つ。採石は2000年前後ごろまで行われ、現在は国の許可を得て職人たちが残された原石を活用する。
特産の雄勝石を原料とする雄勝硯(すずり)は、600年以上の歴史を持つ国指定の伝統的工芸品。板状に加工しやすく、屋根材としても使われてきた。雄勝町内では、雄勝観光物産交流館や総合支所、波板地区の防潮堤の壁をスレートが彩る。
玄昌石の玄は黒、昌は美しいという意味を持つ。硯には墨や漆を塗り、石皿は透明なコーティングを施す。職人の仕上げ技で色はより濃くなり深みを増す。
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東日本大震災からの復興と共に、色彩を取り戻した石巻地方。自然や食、建築、工芸それぞれが持つ「色」を届ける。