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2022ニュース回顧 取材ノートから>野蒜海水浴場、12年ぶり開設

波打ち際で海水浴を楽しむ子どもたちや家族連れ。周辺には防潮堤が整備された

<ビーチスポーツ推進へ>

 東日本大震災で大きな被害を受けた東松島市の野蒜海岸に今夏、家族連れが波と戯れる夏らしい光景が戻った。防潮堤や周辺道路の整備を経て、震災後休止していた野蒜海水浴場が12年ぶりに開設された。

 海開きを目前に控えた6月、子どもの頃から海水浴に来ていたという地元住民の男性は「町の名前は知らなくても野蒜海水浴場は知っているという人もいたほど人気だった」と誇らしげに話してくれた。他の住民も気にかけていたという海水浴場の再開を喜ぶ姿が印象的だった。

 野蒜海水浴場は県内有数の観光地として毎年多くの海水浴客でにぎわい、震災前年の2010年には約4万8000人が訪れた。

 海岸は津波で堤防や松林が破壊され、県は海抜7.2メートルの防潮堤(延長2896メートル)と県道を整備。復興工事が落ち着き、安全性が確保されたことから今夏、開設にこぎ着けた。

 約3キロに渡る海岸線のうち、開設されたのは宮戸地区寄りのエリア。近くには駐車場やトイレなどが新たに整備され、砂浜にはビーチスポーツ用のコートが完成した。6月下旬には地元団体や住民らによる清掃活動が行われ、開設への機運が高まった。

 一方で順風満帆の船出とは行かなかった。7月20日の海開き直前には、大雨の影響で吉田川や鳴瀬川から大量のかやが漂着する事態に見舞われた。撤去作業が行われたが、遊泳区域外の砂浜にもたい積したかやが関係者の頭を悩ませた。

 震災後初の開設を知り市外から訪れた人もいたが、入り込み数は7月20日から8月21日までの33日間で2720人にとどまった。市は夏だけでなく、ビーチコートの年間を通じた活用も進めていく考えだ。

 市内では今年、新型コロナウイルスの影響で開設を見送っていた宮戸地区の月浜海水浴場も3年ぶりにオープンした。

 野蒜地区と隣り合う宮戸地区では宮城オルレ奥松島コースの人気が年々高まり、奥松島遊覧船は日本三大渓の嵯峨渓を海上から楽しめる。市は今年、「世界の持続可能な観光地TOP100選」にも選ばれた。

 豊かな自然と観光資源に加え、海水浴場の再開は地域の再生とにぎわいの復活を後押しすると感じた。地域内外から多くの人々が足を運び、かつてのように世代を超えて親しまれた海水浴場の姿が戻ることを願っている。(及川智子)

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