森の美術館 衣料品自給へ工房営む <廃校ルネサンス(6)旧川崎小腹帯分校(宮城県川崎町)>

雄大な蔵王連峰の麓にある宮城県川崎町。前川地区の山間部を通る国道457号沿いに、鮮やかな青色に彩られた木造平屋の建物が立っている。1990年に閉校した川崎小腹帯分校の旧校舎だ。
2022年3月、持続可能な暮らしを考え、実践するNPO法人「森の美術館」の活動拠点として生まれ変わった。草木染と正藍染めの工房があり、ワークショップを通じて地域住民らと交流を重ねている。
「学びやがあった場所は、いつの時代でも工夫次第で地域の交流拠点になり得ると思う」。染色家の木ノ瀬千晶理事長(42)が力強く語る。
木ノ瀬さんは18年に宮城県松島町から移住した。「長男の養育や自らの仕事に適した自然環境を求めた結果、川崎町に導かれた」と振り返る。気の合う仲間が町内にいて、共に活動する場として旧分校はぴったりだった。
木ノ瀬さんの草木染工房になっているのは元校長室。昔ながらの機織り機や糸紡ぎ機などが並ぶ。
かつての倉庫では、法人副理事長の農家佐藤大史(まさふみ)さん(41)が正藍染め工房を営む。町内で栽培、発酵させた藍を使い、伝統的な染色技法に徹する。「ここでは自然と調和して生きることができる」と充実した表情を浮かべる。
糸を紡いだり、染め方や織り方を学んだり。不定期に開くワークショップは、参加者に「衣の自給」の意味を考えてもらうのが狙いだ。宮城県亘理町のクラフト作家佐藤あゆみさん(41)は、羊毛の織り方などのワークショップに計4回参加した。「廃校を無駄にせず、自然の力を生かして活動している姿勢に共感する」と声を弾ませる。
旧教室は衣料品などの展示スペースや休憩ルームとして使われ、施設全体がぬくもりに包まれている。木ノ瀬さんと大史さんは「ここを訪れることで癒やされ、安らぎや気付き、希望を感じてほしい」と声をそろえる。
森の美術館は6月、拠点近くの畑に会員制のシェア農園を開く。会員みんなで野菜を作って、みんなで分かち合う。併せて拠点内を改修し、シェアキッチンやブックカフェ、共同購入スペースも整備していく方針だ。
「大地を耕し、食料や繊維、染料などを自給できる暮らしの象徴的な場になれば、うれしい」。木ノ瀬さんは、目を細めて施設を見渡した。

川崎小腹帯分校は、1919(大正8)年に開設された川崎尋常高等小腹帯出張教授所が前身。閉校後は一時、画家のアトリエとして使われていた。森の美術館の施設内は、ワークショップ以外でも都合が合えば案内してもらえる。連絡先は佐藤大史さん090(2309)6451。

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