いしのまき食探見 > アナゴ 脂の乗ったメスが多数
海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。
アナゴ
石巻市小渕浜の表浜漁港は全国屈指のマアナゴの水揚げ量を誇る。脂の乗りがよく太いメスが多いのが特徴。多くは東京都の豊洲市場に出荷され、石巻地方で出回るのは一部だけだ。
小渕浜でマアナゴの漁から直売、提供する食堂の経営までしているフジマル佐藤商店を訪ねた。マアナゴ漁は6~12月に約80センチの筒を約20センチ間隔で海底に沈めるはえ縄漁で行う。マアナゴの暗く狭い所を好む習性を利用した伝統的な方法だ。
「マアナゴはデリケートな魚だ」と佐藤秋義会長(74)は話す。商店では水揚げしたマアナゴを浄化装置の付いた水槽に2日間入れ、老廃物を吐かせる。吐いた老廃物をエラに詰まらせると死んでしまい、鮮度が落ちてしまうからだ。「アナゴは生きていて初めて価値がある。活魚は難しい」と苦労を語る。
地域の厳選食材にこだわるイタリア料理店「アル・ケッチァーノ石巻」(石巻市立町2丁目)の前菜でマアナゴが使用されていると聞き、同店を訪ねた。
提供されているのは「アナゴのフリット(イタリア風天ぷら)と山形のだし」など。口に入れた瞬間、サクサクふわふわとしたアナゴと、トロトロでみずみずしい野菜のハーモニーに驚かされた。マネジャーの小野真司さん(39)は「アナゴの一つの食べ方を提案し、お客さんに楽しんでもらいたい」と笑顔で語った。
石巻のアナゴをぜいたくに、いつもと違う食べ方で味わってみるのもいかが。
(石井季実穂)
<メモ>
近年、石巻地方で存在感を高めているのがイラコアナゴだ。マアナゴは水深約100メートルに生息するのに対し、イラコアナゴは深海魚。マアナゴより安価で、トロール船などで1年を通して水揚げされる。石巻地方では「石巻あなご」として販売、提供されることが多いという。
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