元気の源は牧山登り 86歳の藤平さん、20年間毎朝 四季の移ろい楽しむ
カランカラン。午前6時半過ぎ、山道に熊よけの鈴が響く。石巻市湊の牧山(標高247メートル)。同市開北2丁目の無職藤平義久さん(86)が山登りを始めた合図だ。毎朝登り続けて約20年になる。体力づくりのほか、四季の移ろいを楽しめ、出会いの場にもなっている。
「ちょっとの雨なら山の木々が屋根になって、体がぬれないんだ」
藤平さんは雨の日も欠かさず登る。自宅を出るのは毎朝6時半前。牧山市民の森第1駐車場まで車で移動し、約2時間かけてゆっくり中腹まで登る。ストックを両手に持ち、砂利と土の山道をずんずん進む。
往復約4キロ。道中では四季で変わる山の表情を楽しむ。春は桜、これからの季節は紅葉が美しいという。時々、木々の向こうに大海原が見える。
登り始めて知り合った「山友達」とのひとときも大切な時間。「おはようございます」「涼しくなったね」。今でも数人が週に数回ほど登り続けており、会うと立ち止まって世間話を楽しむ。先は急がない。まれに現れるカモシカも大切な「友達」だ。
旧桃生町出身。長年勤めた水産加工会社を65歳で退職し、暇を持て余した。東日本大震災前、麓に住んでいた牧山に親しみを感じていた。現在の住まいに移り住んでからも、牧山一筋に登り続けている。
「歩くことが健康に一番いい」と藤平さん。3年前には脊柱管狭窄(きょうさく)症を発症。歩けなくなるほどの重症で、手術を受けた。「牧山登り」で鍛えた足腰を武器に、手術の翌日からリハビリを始め、約1カ月後には再び登り始めた。脚に痛みが出た時もあったが、登り続けているうちに治った。今は具合の悪いところはない。
いつも帰宅はお昼前。「規則正しい生活。好き嫌いせずに何でも食べる。そして、牧山だな」。藤平さんは明朝も牧山を登る。
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