閉じる

<大観音の傾き(7)>ここさ立ちつづけねばなんねのさ 山野辺太郎

 大観音の足元で口をあけた竜の像のまえに、四人の老人たちの姿が見える。そしてもう一人、先客がいた。グレーのスーツ姿の若い女が、老人たちと話している。修司はなんだかさきを越された気分になった。あの人、まるで二分後の僕みたいじゃないか。

 修司は水の涸(か)れた池のかたわらをまわり込み、階段をのぼりだす。…

関連リンク