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<記憶の素描(33)芥川賞作家・石沢麻依>青の時間

 夜が下りる前、全てが青に沈む時間帯がある。薄暗い空の色に覆われた街や風景は、輪郭を失って曖昧になり、ひどく遠くなったように見えるのだ。その時、辺りのざわめきは薄れて、静寂だけがちりちりと皮膚を震わせる。夜明け前や日没後に訪れる青の舞台。そんな夜の端にあるひとときを、「青の時間」と呼ぶ。

 この名称を…

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記憶の素描

 仙台市出身の芥川賞作家石沢麻依さんのエッセーです。ドイツでの生活で目にした風景や習慣の妙、芸術と歴史に触発された思い、そして慣れ親しんだ本や仙台の記憶を、色彩豊かにつづります。

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