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<記憶の素描(33)芥川賞作家・石沢麻依>青の時間

 夜が下りる前、全てが青に沈む時間帯がある。薄暗い空の色に覆われた街や風景は、輪郭を失って曖昧になり、ひどく遠くなったように見えるのだ。その時、辺りのざわめきは薄れて、静寂だけがちりちりと皮膚を震わせる。夜明け前や日没後に訪れる青の舞台。そんな夜の端にあるひとときを、「青の時間」と呼ぶ。

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