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東北陸上界に新星 宮城・気仙沼の男子中学生が世界アームレスリング出場の父と見る夢とは

国民スポーツ大会に向け、練習に打ち込む畠山一気さん=宮城県気仙沼市の大川さくら総合公園

 次代の陸上短距離界を担うホープとして頭角を現した中学生が宮城県内にいる。気仙沼市階上中3年の畠山一気(いっき)さん(15)は、8月にあった東北中学大会の男子3年100メートルで大会記録を更新して優勝し、全国大会に出場。アームレスリングの世界選手権に出場経験のある父智一さん(46)が指導役を務め、二人三脚で五輪出場を目指す。(気仙沼総局・藤井かをり)

 一気さんの本格的な陸上競技歴は、まだ1年ほど。小学6年から岩手県釜石市に拠点を置くラグビー「釜石シーウェイブス」のスクールに所属しプレーしていたが、中学1年の冬に腰椎分離を発症したのを機に、昨年10月ごろに転向した。

 通う中学校に陸上部はない。コーチ役の智一さんはスポーツジムで体づくりのノウハウは熟知しているが、陸上競技は未経験。動画投稿サイト「ユーチューブ」や書籍で知識を習得し、独学で指導法を探る。

 脚力に自信があった一気さんだが、転向後に出場した昨年10月の県新人大会は予選で敗退。そこから、全国の舞台を目指した親子の挑戦がスタートした。

 練習は智一さんの仕事が終わる午後7時ごろに始まり、毎日1、2時間程度、市内の公園などで走り込む。今年5月からは仙台市内の陸上教室にも週に1、2回通い、体の使い方などを学んでいる。

 自宅敷地内にはトレーニング器具をそろえた小屋があり、筋力アップにも力を注ぐ。身長172センチの全身をバランス良く鍛え、ベンチプレスでは120キロを上げるパワーを培った。食事制限も並行し、昨年秋に80キロあった体重を約半年で10キロ絞った。

 徹底した体づくりと走り込みが実を結び、今年7月の県中学総体は県中学新記録で優勝し、8月の東北中学大会でも10秒84の大会新記録で頂点に立った。筋骨隆々の体を生かしたダイナミックな走りが持ち味だ。

 目標としていた8月の全国中学生大会は予選を10秒77で通過し、上位入賞が期待されたが、決勝はフライング判定で失格となった。その悔しさを佐賀県で今月11、12日にある国民スポーツ大会で晴らすつもりだ。

 中学3年と高校1年が参加する少年男子B100メートルに出場する予定で、9月下旬に仙台市内であった記録会では自己記録を更新する10秒63をマークするなど、調子は上々だ。一気さんは「10秒46の中学記録を塗り替えたい」と意気込む。

 智一さんは「車で言えば筋肉はエンジン。フィジカルを強化し、スピードアップにつなげたい」と話し、たくましさを増す息子の体を見つめる。一気さんは「高校で9秒台を出し、将来は五輪に出たい」と目標を掲げ、世界を見据えながら日々の鍛錬を重ねる。

智一さん(奥)の指導を受けながら、自宅の小屋で筋トレに励む一気さん
練習に打ち込む畠山一気さん=気仙沼市の大川さくら総合公園

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