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お気に入りのぬいぐるみとお出かけ【特集】レッツ ぬい旅

 お気に入りのぬいぐるみをイベント会場やおしゃれなカフェで写真に収める「ぬい活」。最近では旅先にも一緒に連れていく「ぬい旅」を楽しむ人も増えているという。どんなことをしているのか、実際に旅している人たちに聞いた。

■ぬい旅 体験してみた

 「ぬい旅」ってどんな旅? それを知るため、X(旧Twitter)に「苺谷(@345side)」の名前で活動記録をアップしている、大崎市の女性と一緒に小さな旅に出かけた。

・憧れの「みんくる」バス

外見からは分からないが、車内に入るとたくさんの「みんくる」がシートにデザインされ乗客を出迎える
バスの車内で撮影する苺谷さん。ぬいぐるみの位置を微調整しながら、納得いくアングルを探る。右はこの時の写真

 まず向かったのは泉区の仙台市交通局実沢営業所。ここにお目当てのバスがあるという。旅するぬいぐるみは苺谷さんお手製の、東京都交通局マスコットキャラクター「みんくる」。営業所所属のバスにかつて都バスだった車両が2台あり、シートに「みんくる」がデザインされているので一緒に撮りたいという。90台近い所属車両がある中、普段は市内のあちこちを走り、なかなか出合えないレア車両を、営業運転の合間に許可を得て見せてもらった。

 車内に入るとさっそく撮影開始する苺谷さん。「この構図かわいい」と次々スマホのカメラに収めていく。車内を彩るみんくるはグリーン系の色。対して苺谷さんのみんくるはピンク色。理由を聞くと「公式ぬいぐるみが入手困難なので、手に入れやすい布などで自作しました。ピンク色なので『ぴんくる』と呼んでいます。外出時はビニールポーチに収納して持ち歩きます」と話す。

・風景が変わって見えた

直前まで降っていた雨があがり、木々の緑がきれいに見えたので撮影。「ぴんくる」との色の対比が映える1枚になった
七ケ浜町の浜辺で苺谷さんが撮影。ベンチやサングラスなど、小道具も自分でそろえ持ち歩いている

 バスの撮影後は青葉区の定義如来西方寺を訪問。五重塔の前で、コイが泳ぐ池のほとりで、名物の三角油揚げと一緒に…、とにかく撮る。旅の写真を多くXに投稿する苺谷さん。店舗では撮影許可を取り、周囲の人物が写り込まないようにするなど配慮を欠かさない。

 旅の記念写真といえば自撮りを想像しがち。なぜぬいぐるみなのか聞いた。「自分にとってぬいぐるみ撮影は『推し活』。投稿でキャラクターの魅力を伝えたいし、同じ活動をしている人の写真を見ることも癒やしになります。ぬいぐるみは置き方や撮影角度によって表情が変わって見え、重さが存在感を伝えてくれるので好きです」とのこと。さらに「ぬい旅をするようになって、ここで撮ったら面白そうとか、風景の見え方が変わりました。そんな自分自身の変化も含めて楽しいです」と笑顔がこぼれた。

■旅の相棒 しっかりケア

 旅の相棒にはいつまでもきれいでいてほしい。クリーニング業のオートランドリータカノ(太白区)ホームクリーニング工場マネージャーの阿部慎也さんに、自宅でできるぬいぐるみのお手入れを教えてもらった。

・普段のお手入れ

❶人肌程度のぬるま湯に浸してよく絞ったタオルで、優しく拭き上げる ❷乾燥後、馬毛などの柔らかいブラシで整える

・汚れを落とそう

❶洗えるかどうか、まずタグを確認 ❷ぬるま湯に洗濯用洗剤(中性)を指定濃度で溶き入れ、優しく押し洗い。その後ぬるま湯に浸してすすぎ、押し洗いと同じ要領で中ワタを脱水する ❸大きめの洗濯ネットに入れ、風通しの良い日陰で乾燥させる

・プロから一言

タカノではぬいぐるみ専門のクリーニングコースを用意しています。汚れを取る方法が分からないなど、困ったときは相談を。表面や中ワタの素材が洗浄に耐えるのかを含め診断します(阿部さん)

タカノの工場でクリーニングしたぬいぐるみ。時間をかけ丁寧に仕上げている
タカノWEBサイトのぬいぐるみクリーニング案内

■ぬいぐるみ 心の支え

 柔らかな絵と優しい言葉で日々を描く絵日記ブログ「むむむ新聞」。投稿主は仙台市出身で絵本制作を仕事にしている、いげたゆかりさん=神奈川県海老名市=。投稿される絵に必ずと言ってよいほど登場する小さなハリモグラ。実はぬいぐるみなのだとか。話を聞くと、いげたさんとぬいぐるみの強い絆があった。

・旅行や日常を絵物語に

野球観戦での1枚。右から「もぐ」「ぎんちゃん」「もぐママ」。右の絵はその日のブログより(8月25日投稿)
スペイン旅行でサグラダ・ファミリア教会を訪れた際の写真。左はブログの絵日記(2023年8月23日投稿)

 「子どもの頃からぬいぐるみ好きで、以前は『はりもぐら』の作家名でぬいぐるみを制作・販売していました。それを知った両親が海外旅行のお土産にハリモグラのぬいぐるみを買ってくれたんです」といげたさん。とても気に入り「もぐ」と名付け、コロナ禍で孤独を感じたことを機に飲食店や図書館、映画館など、どこでも連れ歩いたという。  その後ぬいぐるみは大きめサイズの「もぐママ」、ハイイロオオカミの「ぎんちゃん」が加わり、キャンプや野球観戦など、外出先の幅も広がったそう。「スペイン旅行の時にはツアーの参加者や現地ガイドに、かわいいと声をかけてもらえました。ぬいぐるみと一緒だったからこそできた体験だなと思います」と、「ぬい旅」ならではのエピソードを教えてくれた。このときの様子もブログで絵物語のように描かれている。

・心の変化 気付ける存在

音楽劇で使うため、いげたさんが手作りしたぬいぐるみ

 いげたさんにとってぬいぐるみとはどんな存在なのだろう。「友達とも家族とも違うし、自分を重ねているわけでもなく…。自分でも意識していない心の変化に気付いて寄り添ってくれるような、大切な存在でしょうか」と言葉を選びながら答えてくれた。「例えばがむしゃらに仕事をしているとき、もぐがこちらを見て『そろそろおやつの時間もぐ?』と言っている気がするんです。まるで心をケアしてもらっているような気分になれ、おかげで健やかに毎日を過ごせています」とのこと。ぬいぐるみと暮らし、旅をすることで日々が楽しいストーリーになっているのかもしれない。

〈プロフィール〉
いげたゆかりさん:大学卒業後に絵本制作を学ぶため専門学校へ。2017年「よるのあしおと」で日本新薬こども文学賞絵画部門最優秀賞。物語と絵を担当した「秋保絵本シリーズ きくふく100こ おとどけします」は太白区の秋保ヴィレッジ内の物産館「アグリエの森」で購入できる(1部330円)。

いげたさんの絵本
むむむ新聞

■地元の「ぬい」集めてみた

 ご当地キャラクターが多くいる昨今、「ご当地ぬい」もいろいろあるはず。見つけた「ぬい」を少しだけご紹介。

・独眼竜ねこまさむね

伊達政宗をモチーフにした仙台愛あふれるぬいぐるみ。白石市の「小十郎プラザ」や仙台駅前イービーンズ内で不定期開催される「ねこまさむねPOPUPストア」で購入可能(1628円)。
ポップアップストアWEBサイト

・仙台弁こけし

愛らしいキャラクターが好評の「仙台弁こけし」がぬいぐるみに。宮城の伝統こけしをモチーフにしたキャラクター「なるこっつぁん」(左)と「やじろうちゃん」(右)の2種類がある。公式オンラインショップや宮城県内のおみやげ店などで購入可能(各2420円)。
公式オンラインショップ

・もふもふパタ崎さん

大崎市に飛来し、そのまま居着いたマガンをイメージした市の公式キャラクター。「食の蔵 醸室(ルビ:かむろ)」や「あ・ら・伊達な道の駅」などで購入できる(1980円)。
みやぎ大崎観光公社公式WEBサイト

・東北ずん子&ずんだもん

ずんだ餅がモチーフの東北応援キャラクター「東北ずん子」(左)と、ずんだ餅の妖精「ずんだもん」がお座りしている姿が愛らしい(各4400円)。
公式ショップ

(河北ウイークリーせんだい 2024年10月31日号掲載)

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