福島・国見町長と前兵庫県知事、類似点を指摘する声 「疑惑追及職員を処分」「議会の辞職要求に応じず」…<リポート2024>
高規格救急車リース事業問題で揺れる福島県国見町の引地真町長(64)と、パワハラ疑惑告発文書問題で失職した斎藤元彦前兵庫県知事(46)の類似点を指摘する声が関係者から上がっている。両者とも内部からの疑惑追及を否定し、議会の辞職要求に応じていない。異論を退ける独善的なトップか、信念を貫く改革派リーダーか。ともに再選を目指す町長選と知事選が11月にあり、有権者の審判が注目される。(福島総局・氏家清志)
独善的なトップか、信念貫く改革派リーダーか
「兵庫の斎藤知事と一緒だ。(辞職という)政治決断ができない」。15日にあった国見町議会臨時会。中堅議員が、リース事業に関する瑕疵(かし)を認めながら自身の責任は減給とした引地町長にかみついた。
斎藤前知事は告発文書問題を受け9月に兵庫県議会で不信任決議を突き付けられたが、「本当に辞職すべきなのか」と不満を漏らし辞職しなかった。町議は「引地町長の姿に斎藤前知事が重なって見えた」と語る。
反省の弁を述べる一方、自身の正当性を主張する点も一致する。
「町民の心配と不信を招いた」。引地町長は臨時会後の記者会見で陳謝するとともに「(事業を受託した)ワンテーブルが特異だった」「町民福祉の向上になり得た」とリース事業そのものは否定しなかった。
斎藤前知事も9月26日の会見で「至らなさがあった」と反省を口にしつつ、「改革を止めるわけにはいかない」と出直し選挙への立候補を表明。知事給与削減や行財政改革など実績もアピールした。
2人とも11月に審判
中央大の佐々木信夫名誉教授(行政学)は「選挙で民意の負託を受けた自負から、リーダーシップがある首長ほど強いマネジメントに出る傾向がある。斎藤前知事が発言した『選挙で80万人以上の負託を受けた』が典型だ。国見町長も同じではないか」と指摘する。
最大の共通項と言えるのが疑惑追及への対応だ。
国見町は3月、ワンテーブルなどへの便宜供与を疑い情報収集していた課長職の50代男性を減給処分にした。町は、リース事業に「法令に触れる事実はない」として職員の行動は公益に当たらないと判断。第三者による関連文書の情報公開請求も拒否した。
「うその文書を作って流すのは公務員失格だ」。同じ3月、斎藤前知事は、記者会見で幹部職員が作成した告発文書を「事実無根」と断じた。5月に停職3カ月の処分を受けた幹部職員は7月に死亡した。
佐々木名誉教授は「公益通報制度で告発者保護の仕組みができ、正義感から内部告発する職員が増えている。そうした変化を見抜けず、懲戒処分で事なきを得ようとする古い体質が類似している」と話した。
一連の指摘に対し、引地町長は「兵庫と違い、国見町議会は不信任決議をしていない。似ているという指摘は主観的なもので、根拠がない」と反論した。
任期満了に伴う国見町長選は11月5日告示、10日投開票、兵庫県知事選は10月31日告示、11月17日に投開票される。
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