「クラフトサケ」造り 映画に 秋田の制作会社、男鹿や福島・南相馬の醸造家ら撮影
日本酒の製造技術をベースに副原料を加えたクラフトサケを醸造する東北の蔵人らを追ったドキュメンタリー映画の製作が進んでいる。クラフトサケ造りを通し、本格的な日本酒造りに挑もうと奮闘する姿を描く。(秋田総局・織田雅子)
映画祭参加や劇場公開の費用、CFで募集中
タイトルは「かもしびと」で上映時間は約90分。秋田県男鹿市の「稲とアガベ」、福島県南相馬市の「haccoba(ハッコウバ)」、京都市の「Linné(リンネ)」の各代表が出演する。サケ造りの様子や地域住民との交流を映像に収め、来夏以降に国内外で公開する予定。
撮影は「稲とアガベ」の岡住修兵社長(36)が創業1年前の2020年、秋田市の映像会社アウトクロップに依頼して始まった。
背景にあるのが、酒税法に基づく日本酒(清酒)の製造免許が過去70年で一度も新たに交付されていないこと。需給バランスを保つため事実上、新規参入できない状況となっている。
一方、ホップや果物など副原料を加えたクラフトサケは「その他の醸造酒」に分類され、参入しやすい。岡住社長は「次世代のためにも、誰かが現在の制度を突破しなければいけない。われわれの挑戦を伝えたかった」と振り返る。
監督を務めるアウトクロップの松本トラヴィス取締役(26)を交え、三つの蔵の代表が集まるイベントが11月23日、男鹿市であった。
岡住社長は「未知の可能性があるクラフトサケも深掘りしたいし、日本酒も造りたい。クラフトサケは足し算的で、日本酒は研ぎ澄ましていく面白さがある。両方できたらうれしい」と希望を口にした。
「ハッコウバ」が酒蔵を置く福島県南相馬市小高区は東京電力福島第1原発事故で全域避難を経験した。佐藤太亮社長(32)は「にぎわう景色を生み出し、海外でも地域に融合したサケを造りたい」と意欲を示した。「リンネ」の今井翔也社長(36)は「造り手が世界に広がり、『世界酒』になるのが理想だ。日本酒業界が続くためにも、ボトルネックの問題を一つずつ解決したい」と語った。
日本の「伝統的酒造り」は5日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。
松本取締役は「酒の製造に免許が必要な国は世界で珍しい。酒造りの現状について議論するきっかけになればいい」と話した。
映画の製作委員会は、国内外の映画祭への参加や劇場公開の費用をクラウドファンディング(CF)で募っている。CFサイト「Makuake(マクアケ)」で来年2月19日まで受け付ける。
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