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ホテルで「虎舞」躍動感たっぷり 岩手・大槌、団体客向け公演が好調 訪日客増加へ呼び水となるか

台湾からの団体客に披露された虎舞

 岩手県大槌町の伝統芸能「虎舞」の公演が好評を博し、町の観光資源として期待を集めている。町内のホテルで団体客を対象にした公演は4月に始まった後、申し込みが相次いで既に70回を超えた。連日の公演は担い手の上達も促し、伝統の継承に役立っている。

担い手も上達、伝統継承に一役

 虎舞団体に所属する10~30代の約20人が11月22日夜、仕事や学校を終えて「三陸花ホテルはまぎく」に集まった。台湾から訪れた約20人を前に虎舞を披露すると、大きな拍手が送られた。

 初めて見たという林秀月さん(61)は「とても躍動感があった。古里の伝統を守ろうとする若者の気持ちも感じた」と感激した様子だった。

 大槌町には虎舞団体が五つあり、歌舞伎に由来する伝統的な系統と、躍動的な新しい系統に分かれている。安渡(あんど)虎舞などの2団体は町の無形民俗文化財に指定され、通常は秋の祭礼「大槌まつり」に合わせて披露されてきた。

 2021年以降は年10回前後、小槌神社で虎舞などの郷土芸能を披露するイベントも開催。さらに多くの観光客に見てもらおうと、今年4月からは事前に申し込んだ団体客を対象に公演を始めた。特に中部、関西地方からの旅行客に人気があり、観光シーズンの11月には公演回数が20回を超えた。

 ホテルはまぎくの立花和夫総支配人は「観光客からは『大槌の人や文化を肌で感じることができた』と評価されている。沿岸は内陸部よりも訪日客が少なく、虎舞が誘客の呼び水になってほしい」と期待する。

 公演は虎舞団体にとってもメリットが大きい。演舞の機会が飛躍的に増えたことで、担い手の技の向上につながっているという。公演料は全額が町虎舞協議会を通じて各団体に支払われる。月に4、5回の公演で十数万円になり、活動資金も安定するようになった。

 町虎舞協議会の菊池忠彦会長は「発表の場があることは(演舞の中心となる)若い担い手の意欲につながる。伝統を継承するためにも取り組みを続けていきたい」と意気込む。

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