福島・飯坂温泉の源泉停止か、危機感沸騰 供給元が大ピンチ! 2月に苦肉の打開策
福島市の飯坂温泉で、浴場への源泉供給が止まる危機が生じている。供給元の特別地方公共団体「飯坂町財産区」の財政が窮迫し、2029年度にも運営停止する可能性があるためだ。利用低迷が背景にあり、財産区の事務局を担う市は今年2月1日、共同浴場の利用料金を引き上げるなど対策を急ぐ。(福島総局・氏家清志)
財産区は、八つの共同浴場を含む72事業者に温泉を届ける。近年、収入減と設備の老朽化で修繕経費がかさみ、赤字が目立ってきた。余剰金も減少し、市の23年の試算では29年度に運営資金がゼロとなることが判明した。
市によると、財産区が管理する共同浴場の22年度の利用者数は12万8000人で、13年から約5万人減少。収入は4分の3に落ち込んだ。旅館数も減り、温泉の使用料収入は1割減った。地元で風呂付きの住居が増えたことや住民の高齢化などが理由という。
厳しい現状に温泉供給設備の老朽化が追い打ちをかける。源泉をくみ上げ、事業者に送る送湯管やポンプが耐用年数15年の4倍を超え、故障が相次ぐ。設備更新費用は約2億5000万円に上る試算だ。
財産区の運営方針を決める管理会会長を務める福住旅館の紺野正敏社長は「共同浴場は住民の利用だけでなく、観光にも役立っている。廃止するわけにはいかない」と話す。
利用料の値上げは全ての共同浴場が対象。国内最古の木造共同浴場で飯坂温泉の発祥とされる鯖湖(さばこ)湯は200円を400円、飯坂温泉駅近くの波来(はこ)湯は300円を500円にする。
コスト削減のため営業時間も短縮する。8浴場で実施していた通し営業(午前6時~午後10時)は、鯖湖湯を含む3浴場で終了を1時間早めて続けるが、他の5浴場では午前か午後どちらかの半日営業に切り替える。
熱々の湯として知られる鯖湖湯を訪れた兵庫県姫路市の主婦岸本裕子さん(50)は「400円でも安い方だ。体がぽかぽかに温まり、また来たいと思った。維持できるなら値上げは仕方ない」と話した。
[飯坂町財産区]地区住民でつくり、市が事務局を担う。1964年に旧飯坂町と福島市が合併した際「温泉は地区の財産として残したい」との住民の要望を受けて設置された。共同浴場運営と温泉供給事業の収入により、独立採算で運営してきた。
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