もう一つのどんと祭 仙台東照宮に「ぬいぐるみ」を持ち込む人々の声に耳を傾けた 心機一転、感謝、卒業…
仙台市青葉区の仙台東照宮は毎年、小正月の伝統行事「どんと祭」で、ぬいぐるみや人形の持ち込みを受け付ける。県内では異例の対応だ。今年も14日、思い出のこもった品々を宮司が清め、焼却処分に回した。大切な「友」との別れを惜しむもう一つのどんと祭を追った。(編集部・勅使河原奨治、大隈海空)
「お空で一緒に遊んであげてね」
「心機一転、頑張ろうという気持ちです」。両手でゾウのぬいぐるみを抱えてきた青葉区の会社員佐竹良さん(46)の表情は晴れやかだった。
牛タン専門店「喜助」で昨年6月、店長からエリアマネージャーに昇進した。引っ越しも重なり、数年前に「縁起がいいから」と知人にもらったぬいぐるみを手放すことに決めた。「御利益は十分」と話し、感謝を伝えて立ち去った。
青葉区の70代女性は、ひな人形をじっと見つめ、両手を合わせた。50年ほど前、生まれてきてくれた待望の娘に贈った。娘が巣立った後も普段から飾って眺めてきた。
ケースが壊れ、人形もほこりをかぶるようになった。孫娘から引き取りを断られ、手放そうと決めた。「今でもひな飾りの前で笑う幼い娘が目に浮かぶ」。預かり場所に一礼すると、祭りの雑踏に消えていった。
「供養してもらえた」
青葉区の保育士出口沙紀さん(36)と子ども4人は、髪の毛が硬くなり、手足も外れたリカちゃん人形をいとおしげに抱えてきた。
幼い沙紀さんが買ってもらった人形は子どもに引き継がれ、楽しい時間をたっぷり過ごした。「孫のために、と母が大事に取ってくれていた。捨てるのではなく、供養してもらえてよかった。『今までありがとう』と伝えた」と話した。
若林区の小田嶋葵威さん(6)は体より大きなキャラクターのぬいぐるみとお別れした。三つどもえでじゃれ合っていた飼い犬が11日に死んでしまい、寂しくないように、と神社に預けることを決めたという。
新しいおもちゃが増えてきて「もう卒業しよう」と、母の友香さん(39)が何度言っても手放せず大切にしていた。最後は親子で声をそろえて「お空で一緒に遊んであげてね」と別れを告げた。
仙台東照宮はどんと祭に合わせて7~14日、使わなくなったぬいぐるみや人形を預かった。量にして1000リットル入りフレコンバッグ約30袋分。持ち込みの初穂料は1回1000円、3体以上は2000円とした。
どんと祭は、正月飾りやだるまなど神棚に祭った物を毎年1月14日にたきあげる。20年ほど前から、御神火にぬいぐるみが投入されることが多くなり、仙台東照宮は伝統の形を守るため、神事とは別に預かる。
14日深夜、御神火が消され、境内が薄暗くなると、神主がぬいぐるみの前に現れた。四方八方から、はらい串を2度、3度振るうと、清めの儀式は終わった。フレコンバッグは翌朝、清掃業者の荷台に詰め込まれていった。
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みやぎ地域安全情報
宮城県警 みやぎセキュリティメールより
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