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高校入試の追試「生理痛も対象」 宮城・七ケ浜の大学生桜井さんが周知に奔走

アルバイト先の学習塾で女子生徒と話す桜井さん=1月9日、宮城県塩釜市

 公立高校入試で生理(月経)による体調不良が追試験の対象になっていることへの理解を広めようと、東北芸術工科大4年の桜井心音(ここね)さん(22)=宮城県七ケ浜町=が啓発活動に取り組んでいる。制度が受験生や教育現場に周知されていない現状を調査し、自治体などに広報強化を提言。「性別に関係なく誰もが平等に受験機会を得られるよう、追試験制度を多くの人に利用してもらいたい」と話す。(多賀城支局・浦響子)

 

 生理痛や月経前症候群(PMS)を原因とする入試の欠席を巡っては、文部科学省が2023年12月に追試験の対象となる旨を明記した文書を全国の都道府県教委に通知。東北では24年春の実施分から、6県教委全てが県立高入試で追試験の対象としている。

 桜井さんは4年前からアルバイト先の学習塾で中学生を指導。女子生徒から生理に関する相談を受けたり、生理痛で泣きながら早退する姿を見たりする中で、問題意識を持った。

 「女の子は生理による体調不良で勉強時間が削られ、集中できない上に、受験でも格差が生じてしまうのはおかしい。社会全体で向き合っていかないといけない」

 追試験制度の啓発活動を大学の卒業制作のテーマに据え、24年11月に宮城県塩釜市の中学校で制度や性差を考える出前授業を実施。生徒283人にアンケートを行い、制度の認知度も調べた。

 回答では、生理に伴う体調不良も対象になることを知っていた割合は男女とも1割未満。認知度不足に加え、「周囲からの目が気になる」(女子)「女性ばかりが優遇されている気がする」(男子)など、生理への理解不足から女子生徒が制度を利用しづらい実態も浮き彫りになった。

 「そもそも制度を知らない先生も多い」と桜井さん。アンケート結果や追試験制度の仕組みを分かりやすく紹介したフローチャートを作ってまとめ、宮城県教委や県内の一部市町、国会議員らに制度が浸透するための広報強化を申し入れた。

 桜井さんは「受験シーズンにCMをするなど、制度の重要性と利用方法を広めるには行政の広報活動が不可欠だ。教育現場でも周知を進め、女子生徒が安心して受験に臨める環境を整えてほしい」と話す。

[公立高校入試の追試験制度]インフルエンザ感染や交通事故など、やむを得ない事情によって本試験を受けられなかった生徒を対象に実施。宮城県教委は2024年2月、生理による腹痛などの月経随伴症状を対象例として明示した通知を各高校や市町村教委に送付している。東北の他県教委でも入試の実施要項に明記するなどの対応を取っている。

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