下帯姿の男衆が一心不乱に奪い合うのは… 岩手・奥州で「蘇民祭」後継催事

岩手県奥州市の黒石寺で昨年まで続いた奇祭「蘇民祭」を引き継ぐ催し「熱き想(おも)いの男たちの集い」が5日、寺周辺で初めて開催された。氷点下の身を切る寒さの中、下帯姿の男衆約15人が蘇民袋を巡る熱戦を繰り広げ、無病息災を祈った。

黒石寺蘇民祭保存協力会青年部が主催し、時間帯も蘇民祭の夜間から日中に切り替え、短縮して実施。男衆は寺の下を流れる瑠璃壺(るりつぼ)川で「蘇民将来」と叫びながら冷水で身を清め、「ジャッソー、ジョヤサ」と勇ましいかけ声を響かせた。
粉雪の舞う特設会場で約40分に及ぶ蘇民袋争奪戦に突入。当初は和気あいあいとした雰囲気の戦いが次第に熱を帯びて一心不乱の肉弾戦となり、近くの田んぼになだれ込んで決着した。
最後に蘇民袋の締め口を握り、取り主になった岩手県金ケ崎町の農業阿部光平さん(35)は「人数は少なかったが、青年部や参加者の心意気が伝わった。改めて良い祭りだと思った」とかみしめた。
青年部の菊地敏明部長(50)は「薬師信仰に基づく民の祭りだ。後世に伝えていくのが使命。寺と話し合い、できることを続けたい」と力を込めた。
蘇民祭は高齢化と担い手不足で昨年、1000年以上とされる歴史に幕を閉じた。黒石寺でも5日、祈とうがささげられ、檀家(だんか)約10人が参列した。

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