味も強さも「はえぬき」以上 期待の新「米」27年デビューへ その名も「山形142号」
山形県は5日、コメの主力品種「はえぬき」を上回る高温耐性や収量の新品種「山形142号」を県の認定品種に採用し、2027年のデビューを目指すと発表した。県内の作付けシェア約6割を占めるはえぬきの欠点を補い、生産性向上を見込む。
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新品種は県水田農業研究所が12年、ブランド米「雪若丸」と「山形122号」を交配し生まれた。高温耐性は9段階中、上から4番目の「やや強」。東北で作付けされている品種では最上位の雪若丸や県産ブランド米「つや姫」と同じで、はえぬきより1段階高い。収量は、はえぬきと比べて1割以上多い。
県によると、色は白さが際立ち、食味評価もはえぬきを上回る。雪若丸の大粒でしっかりとした特長を引き継ぎつつ、硬さを緩和し、幅広い層にアピールしやすい食感という。
はえぬきは1992年の本格デビューから30年以上が経過。2023年産米は高温で1等米比率が大きく低下し、新品種を求める声が生産現場を中心に上がっていた。新品種は生産コスト抑制も期待でき、輸出用米としての利用も見込む。
認定品種は奨励品種を目指す前段階。名称は今月中に県内の全小中学校から募集し、3月中に決定する。品種登録を申請した後、4月にも公表する。今後は栽培試験に加えて流通関係者らに意見を聞き、価格帯などの販売戦略を練る。
吉村美栄子知事は定例記者会見で「温暖化対策をしなければ、コメづくりは立ちゆかなくなるかもしれない。実際に試食したが、白くておいしい。幅広く生産されるコメを目指したい」と話した。
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「高温に備え」「市場の評価は未知数」生産者ら期待と注文
山形県が2年後のデビューを目指す新品種「山形142号」について、生産者や販売業者は気候変動対策として一定の期待感を示す一方、はえぬきなど既存品種との差別化を求めた。
2023年の1等米比率低下が深刻だった庄内地域。酒田市の農業法人「農園貞太郎」の遠藤広道専務(40)は栽培特性の見極めが必要としつつ「はえぬきは引き合いが強いが、暑さで年々育てづらくなっている。置き換えられる品種は必要だ」と歓迎した。
天童市の農業法人「おしの農場」の押野和幸社長(61)は「高温に備えて選べる品種があると安心感が持てる」と強調。「人気の高いはえぬきから移行できるかは、市場の評価を聞かないと分からない」と話す。
JA全農山形の奥山定治米穀集荷販売課長は「市場から受け入れられるかどうかは未知数だ」と前置きした上で、「はえぬきや高温に強い『雪若丸』、ブランド米『つや姫』の主力3品種の中で、どう位置付けて売り出すかが鍵を握る」と指摘した。
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