日本製紙、宮城・石巻工場の脱炭素を加速 555億円投資、高効率ボイラー導入
日本製紙は、宮城県石巻市の石巻工場に555億円を投じ、温室効果ガス排出量の大幅削減に乗り出す。紙の乾燥などに使うボイラーのうち、木材から化学パルプを製造する際に生まれる「黒液(こくえき)」を燃料とするボイラーを高効率の設備に置き換え、石炭燃料のボイラーの使用を停止する。高効率ボイラーは2029年1~3月の稼働を予定し、二酸化炭素(CO2)換算で年間50万トンの削減を目指す。
石巻工場では、バイオマス燃料の黒液を使うボイラー2基、木くずなどを燃料とするボイラー1基、石炭のボイラー1基が常時稼働する。発生した蒸気でタービンを回して発電しているほか、紙の乾燥やバイオマス素材を製造に使用する。
新たに設置するボイラーは性能を示す最大蒸発量が毎時375~390トンで、既存の黒液ボイラーの2倍以上と大きい。稼働後、既存の黒液ボイラー2基と石炭ボイラー1基を停止することで、工場から排出される温室効果ガスを減らす。
投資額555億円はボイラーと蒸気タービン発電機の設置に充てる計画。今年1月下旬、国の支援事業に採択されたため、183億円を上限に助成を受ける。
日本製紙は紙の需要減に伴い、化学パルプから新たなバイオマス素材を生み出す「バイオリファイナリー構想」を掲げ、事業転換に取り組む。脱炭素と経済成長を同時に進めるGX(グリーントランスフォーメーション)の実現も目指す。
石巻工場には、セルロース系の新素材などを年間500トン製造できる国内最大級の生産設備がある。今回のボイラー燃料の転換を機に、環境に配慮したグリーン製品の製造拠点にするとともに、成果を他の国内工場や海外拠点に展開する。
日本製紙の担当者は「森林をスタート地点とし、経済の好循環を生み出すことは当社の存在意義。GXを実現し、新しい地域との共生を目指す」と語った。
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