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山形の「長井紬」で新ブランド設立 伝統とトレンド融合 高級感高まる

 江戸中期から約250年の伝統がある山形県長井市の絹織物「長井紬(つむぎ)」を洋服に取り入れた新ブランド「LCMN」が、1月に誕生した。山形市でファッションのデザインやプロデュースに取り組む中川拓さん(41)が、生地の魅力に引かれて商品化を決意。近年の着物離れから生産者は激減しており、中川さんは「長井紬を後世に残し、地域活性化にもつなげたい」と意気込む。(山形総局・原口靖志)

長井紬をワンポイントにあしらった新ブランドのTシャツを高橋さん(右)に披露する中川さん

 商品化したのはTシャツやパーカ、ブラウスなど10点ほど。胸ポケットやデザインの一部に長井紬の生地をあしらった。長井紬の特徴である素朴な文様「米琉絣(よねりゅうかすり)」で、黒などを基調とした装いにアクセントを加えた。紬には地元の障害福祉サービス事業所の利用者による刺し子が入る。

 「長井紬の伝統と現代のトレンドを掛け合わせることをコンセプトにした。米琉絣の独特の絵柄が出て面白い装いになり、高級感が高まった」と語る。

 中川さんは東京や山形でファッション業界に携わり、人気アーティストグループの衣装も手がける。昨年夏、一般社団法人長井市コミュニティ協議会の企画で、県外のファッション専門学校の学生を招いた長井紬の見学ツアーに講師として参加。1枚ずつ手織りして色柄を出す繊細な作業で生まれる魅力に圧倒された。

長井紬をあしらったブラウス

 長井紬を生産する業者は最盛期の1950年代には20社ほどあったが、現在は2社だけ。「着物需要の低下で販路がなくなり、高い技術があっても衰退するのはもったいない。別の用途で新たな販路を開拓したい」と中川さん。そのために、自らの人脈や経験を生かす方法として新ブランドを考案した。

 クラウドファンディング専用サイト「キャンプファイヤー」で商品を支援金の返礼として出品中。LCMNの公式サイトでも取り扱う。4月からは東京・ラフォーレ原宿のセレクトショップで販売する予定。今後もアイテムを増やし、全国の百貨店や小売店での展開を目指す。

 地元の立場でブランド設立に協力した同協議会の高橋弘人さん(30)は「『メードイン長井』の商品として世界に羽ばたき、関係人口の拡大にもつながってほしい」と期待する。

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