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仙台・中江「花の湯」2月末で休止 番台がある市内最後の銭湯 ボイラー改修の見通し立たず

2月末で休止することになった花の湯=仙台市青葉区中江1丁目

 仙台市内でただ一つ、昔ながらの番台が残る銭湯が今月末に休止する。青葉区中江1丁目の「花の湯」は戦前の創業で86年間、地域の社交場として人々を癒やしてきた。故障したボイラーを改修する見通しが立たず、苦渋の決断に至った。昭和の銭湯文化の薫りを伝える老舗の存続が風前のともしびとなっている。(編集部・勅使河原奨治)

28日で区切り 復活目指す

 最終営業日は28日で、前日と合わせて、湯船に花を浮かべる「花湯」を予定する。建物はすぐ解体せず、寄付や補助で運営する公営施設かNPOの入浴施設として活用の道を探る。

 ボイラーが昨年故障し、湯が漏れるようになった。燃料が余分にかかり、経営を圧迫する。他の配管にも詰まりや漏水が見つかり、大改修が必要となった。

 改修費は約1000万円と見込まれるが、行政の補助金は76万円にとどまる。店主の前田有作さん(56)は「余りに少なく、頼りにならない」と嘆く。金融機関には融資に難色を示された。自力で改修しようにも、入浴料は現在480円で1日の平均利用客は約50人。利益率の低さから断念せざるを得なかった。

番台に座る前田さん=19日、仙台市青葉区中江1丁目
番台から男湯方向への視界
番台から女湯方向への視界。来客時はパーティションで目隠しする

戦後から続く統制価格が経営圧迫

 銭湯の入浴料は、終戦直後の1946年施行の物価統制令が唯一残る規制品目。都道府県が額を決めるため、大型設備の故障、燃料費の高騰などに直面した際に経営問題に直結しやすい構造になっている。

 花の湯は38年に創業し、65年ごろ、今の建物となった。落語「湯屋番」で道楽者の若旦那が憧れる番台は、男湯と女湯を見渡す位置にある。現在は来客時に目隠しを張り、視線を遮るなど配慮する。

湯に入る常連客ら

災害時に本領発揮

 78年の宮城県沖地震、2011年の東日本大震災では設備が被災せず、大勢の被災者を衛生面で支えた。

 前田さんは祖父母、両親に続いて3代目となる。「東日本大震災の時は長蛇の列ができ、時間を制限して多くの人に利用してもらった。たくさん感謝の声を掛けてもらって、公衆の役に立ったと思った。存続の道を探りたい」と話す。

 

脱衣場に置かれたノート

仙台で営業の銭湯は3軒だけに

 近くに住む常連客の大久保貞子さん(83)は「お湯が体になじんだ。歩いて来るのも健康のためになったし、仲間と話すのも楽しかった。長い間、お世話になったので、何とか復活してほしい」とさみしがる。

 仙台市の銭湯は18年に、かしわ湯(青葉区一番町1丁目)が閉店。現在は、駒の湯(同区国分町1丁目)、喜代乃湯(宮城野区小田原1丁目)、鶴の湯(太白区長町4丁目)が営業を続ける。

市内で営業する銭湯の一覧。黒線と「かしわ湯」は閉店してしまった銭湯
重油やまきで沸かしたお湯
昭和時代の銭湯で頻繁に見かけた「ケロリン」の風呂おけ
体重計や身長計が置かれた脱衣場
脱衣場に置かれているドライヤー
せっけんやカミソリなどが売られている棚
脱衣所から望む浴場

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