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「子どもが遊んでいるのを見たことない」仙台・国分町に「陸の孤島」のような公園

 仙台市青葉区のオフィス街の一等地にある「国分町三丁目北公園」は、四方をビルと店舗に包囲された街区のど真ん中にひっそり存在する。昼でも薄暗く、近隣の人々も「人の姿を見たことがない」と話す。日の目を見ない場所になぜ公園があるのか調べてみた。(せんだい情報部・門田一徳)

ビルやマンションなどに囲まれた国分町三丁目北公園。夕刻、わずかな西日が差し込んだ

 公園は東、南、北の三方を6~10階のビルとマンション、西側を住宅を改修した2階建て店舗に囲まれている。設備はベンチ2台とあん馬ベンチ、街灯があるだけ。公園へのアクセスは晩翠通から入る長さ約20メートルの狭いL字通路しかない。

 面積は通路と合わせて約250平方メートルで、周辺住民の利用を目的とした規模。近くで青果店を営む斎藤直司さん(76)は「ここで50年営業しているが、子どもが遊んでいるのを見たことがない」と語り、「地元の人にも知られていない陸の孤島」と例える。

 公園近くで生まれ育ったという喫茶店主の男性(72)は「昔はただの空き地だった。南隣にも空き地があり、野球ができる広さだった」と振り返る。公園の西約200メートル先で見つけた道標には、晩翠通が拡幅された際、東西に延びる「跡付け」という通りが一部廃道となったと刻まれる。公園は廃道跡の一部に当たる。

 市の1972年の調査資料には、戦災復興土地区画整理事業の換地で市有地の場所が決まったとある。青葉区公園課によると、換地後は「ちびっこ広場」という名称で市市民生活課が管理していたが、91年に土地の用途区分が宅地から公園に変更されたという。

 だが、公園の適地とはいえない位置に換地された理由は「当時を知る職員がおらず分からない」(青葉区公園課)という。

四方を建物に囲まれた公園

 建設業の丸本組(宮城県石巻市)は2020年、公園西側の住宅を取得。改修して24年7月、飲食店が期間限定で営業するチャレンジショップをオープンさせた。

 当初はビルへの建て替えを検討したが、公園がビルに囲まれて治安悪化につながる懸念があるとして見送った。同社の担当者は「将来的に公園の土地を取得できるかどうかを市に尋ねたら『難しい』と言われた」と説明した。

 市公園管理課によると、都市公園法の「みだりに区域の全部または一部を廃止してはならない」との規定がネックという。廃止は同規模の代替地を確保するか、公益性の高い都市計画事業などの場合に限られる。

 市内での都市公園の廃止は、仙台西道路の建設時に適用された西公園など極めて例が少なく、「ものすごくハードルが高い」(市公園管理課)。市民に知られず、使われない一等地の公園は、厚い法令の壁にも囲まれている。

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