<ノムさん一周忌>語録「マー君、神の子、不思議な子」

監督通算1500勝を飾り、完投勝ちした田中(右)からウイニングボールを受け取る野村さん=2009年4月29日、Kスタ宮城(当時)

※本文中の肩書や年齢などは、記事掲載時点のものです。

 プロ野球の名将野村克也さんが他界した。東北楽天監督時代は田中将大(現米大リーグ、ヤンキース)、嶋基宏(現ヤクルト)らを育て、球団の礎を築いた。卓越した野球理論の根幹には「人とはどうあるべきか」という人生哲学がある。不安の多い今だからこそ、野村さんのボヤキや語録に凝縮された「教え」を掘り下げてみよう。生きるヒントがあるはずだ。

 東北楽天監督だった野村克也さんが、試合中のベンチで嶋基宏(現ヤクルト)を立たせて叱る場面をご記憶の方も多いだろう。「無視、称賛、非難」。野村さんはこの三つの手法で選手に接した。

 1軍定着前の選手は無視を貫いた。球場でTBSの女性アナウンサー枡田絵理奈さんに自己紹介された時の話。「同じ名字の枡田です」。売り出し中の若手だった枡田慎太郎の名前を出してきた。だが野村さんは「うちの枡田? どいつ?」。見事に名前を覚えていなかった。

 台頭し始めた選手は称賛した。褒め下手の野村さんなりに冷やかしたあだ名で売り出した。外野守備が特長の牧田明久(現東北楽天2軍外野守備走塁コーチ)は「専守防衛の自衛隊」。ヤクルト監督時代に内野の名手宮本慎也さんに使った呼称で期待を表現した。

 打率を4割台に乗せることもあった草野大輔は「安物の天才」。規格外の悪球打ちの中村真人は「天才バカボン」「宇宙人」。爽やかな顔立ちの青山浩二は「歌舞伎役者」と呼んだ。

 勝敗を左右する中心的存在は非難で責任感を促した。2006、07年シーズンとけがが続き、万全で投げられなかった岩隈久志(現巨人)を「ガラス玉」と批判し、エースの自覚を求めた。非難をばねに岩隈は08年に21勝を挙げる。

 やはり野村さんが育てた最高傑作は「マー君、神の子、不思議な子」の名文句でたたえた田中将大(現米大リーグ、ヤンキース)だろう。称賛効果は絶大で07年、高卒新人でいきなり11勝した。今やヤンキースのエース級だ。

 そう考えると、自宅学習が増えた子どもたちも「称賛」で褒めて伸ばすのが効果ありそう。(金野正之)=2020年7月23日掲載

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