<仙台いやすこ歩き>(137)びすた~り 榴ヶ岡/味も笑顔も優しい空間

 風も暖かい昼下がり、2人はてくてく。向かったのは懐かしくって新しいところだ。というのは、かつて宮城県図書館があった宮城野区榴ケ岡の建物においしいお店がオープンしていると教えてくれた人がいたから。

 久しぶりにやってきた建物は、あのまんまだ。正面には「みやぎNPOプラザ」の表示も見えるビルの1階奥にあるのが、目指した「びすた~り榴ケ岡」で、ガラスのドアを開けるとおしゃれな空間が広がる。とはいえ、迎えてくれるのはどこか図書館時代と同じ温かな気配と、スタッフの優しい笑顔。

 テーブルに座れば、窓の外には松の古木や石碑、道路の向かいは榴岡公園と、歴史を感じる風景もまたいい。「まずは、食べなくっちゃね」と、2人はメニューにある「本日のおまかせランチ」を注文する。木のトレーにのった食事はご飯におみそ汁、白いお皿にはとんかつと彩り野菜、小鉢にはエビとイカとサーモンのマリネ、そしてサラダ。小鉢のマリネは春の爽やかさで、とんかつも優しくってコクがあって、ちょっと多めと思ったご飯もなんのその。しっかりといただき、しみじみ「ごちそうさま」である。

 コーヒーの後、ここの管理者であり、特定非営利活動法人「ほっぷの森」の菊田俊彦さん(49)にお話を伺った。ほっぷの森は障害のある人の支援を行っていて、その一環として、働きながら学ぶステージとしてのレストランを管理・運営しているのだそう。ここではNPOの職員3人以外の4人が、NPOとの雇用契約のもとに働いている。「お客さまとの接し方などを実際に学びながら、自分たちでさらに上を目指して頑張っているんです」。マッチングさえできれば、一般雇用への道にもつながる。4人は、同店の前身である長町にあった「びすた~り」でも働いていて一人一人の得意を生かしながら緩やかに前に進んでいます、と菊田さんは話す。

 「びすた~り」とはネパール語で、徐々に、ゆっくり、の意味だという。「だから、マークはカメなんですね」と画伯。ホールで働く女性のユニホームにも、その女性に教える職員の伊藤きよみさん(49)のユニホームにも、みんなに付いているマーク。そのマークは私たちの心にも映ってくるようだ。「ここではお客さんもそっと耳を傾け、知らず知らずのうちに応援してくれる、そんな空気があるんです。ホテルのレストランとは違いますが、こんなレストランもあっていいと思いますね」

 そういう菊田さんは長年、ホテルのレストランでの経験を積んできた人で「何もなかったところに、みんなで新しい空間を作っていくってワクワクするじゃないですか」と穏やかながら情熱的に話す。調理・支援員の渡辺芽衣さん(26)も「お客さまの声がじかに聞こえるのでうれしいです」とにっこり。食材の野菜は、障害者の就労支援のびすた~りフードマーケットが関わって作られる自家製。とんかつも、豚肉を塩こうじに漬けるというひと手間を加えていた。

 すっかりのんび~りの2人。桜のつぼみも膨らむ榴岡公園をのぞいて、さて、仙台駅までの春散歩だ。

おぼえがき/ランチは地域食材中心に

 「びすた~り榴ケ岡」の本日のおまかせランチは自家農園野菜や地域の旬の安全安心食材などを中心に、栄養バランスの良さも考えた食事で日替わりである。他のメニューとしては、鶏肉のトマト煮込み「ポロカチャトーラ」「煮込みハンバーグ」「カジキマグロの味噌麹(みそこうじ)つけ焼き」がご飯・みそ汁・小鉢等付き、そして栗駒カテキン豚ローストポーク丼。ティータイムには、チョコレートケーキ、シフォンケーキからデザートの盛り合わせまであり、大きなコップで出てくる自家焙煎(ばいせん)コーヒーも香り高い。

 グループでのティータイムプランやディナータイムプラン、またテークアウトも用意されている。

 ちなみに同店のある敷地には、1973(昭和48)年まで4代藩主伊達綱村が母・三沢初子の菩提(ぼだい)のために建立した釈迦堂があり、その歴史を刻んだ石碑が建っている。釈迦堂は孝勝寺(宮城野区)本堂前に移築。三沢初子は、歌舞伎「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」に登場する政岡のモデルといわれている。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。

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仙台いやすこ歩き

土地にはその土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター・みうらうみさんとイラストレーター・本郷けい子さんが仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


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