社説(5/3):憲法とコロナ/多様な視点 対策の検証に

 安全か自由か-。選択を迫られたとき、ほぼ全ての国で、多くの人が「安全」を選ぶ。日本でも「安全」と答えた人が8割を超えた。

 100以上の国・地域で行われた「世界価値観調査」(2017~21年)の結果は、危機に直面した人々が政府に強い権限を求めがちになる理由を示している。例えば、新型コロナウイルスから身を守れるなら、政府が個人の「自由」や「権利」を制限するのも仕方ない、という具合だ。

 でも、考えてみたい。

 誰の権利なら、どの程度なら、制限されても仕方ないのだろう。制限される人とされない人に不平等はないのか。

 「おかしい」と声を上げる人も出始めている。

 首都圏を中心にレストランなどを展開する「グローバルダイニング」が、コロナ対応の改正特別措置法に基づく時短命令は違憲だとして、東京都に損害賠償を求める訴えを起こした。都の命令は3月18日。時短要請に応じなかった約2000店舗のうち27店舗が対象で、21日まで午後8時以降の営業停止を命じた。

 27店舗のうち26店舗は原告の経営だった。命令書には、原告がホームページ(HP)などで「行政の協力金だけでは時短要請に応じられない」と主張したことについて、「他の飲食店の営業継続を誘発する恐れがある」と問題視する記載もあった。

 原告は約2000店舗が時短要請に応じていないのに、見せしめのように「狙い撃ち」されたと主張している。

 緊急事態宣言は「営業の自由」などを制限する力を政府と自治体に与える。だが、原告はHPで店内の感染防止策についても紹介していた。きちんと対策を講じていれば、感染が発生するかどうかは主に客の行為にかかっている。これほど厳しい店側への一律規制が本当に必要かどうかは慎重に考えるべきだろう。

 一方、関西地方の派遣型風俗店の運営会社は、持続化給付金などを受け取れないのは不当な職業差別で「法の下の平等」に反するとして、国に損害賠償を求めている。

 第1回口頭弁論では、女性経営者が「この仕事は恥じるような職業ではない」と強調したのに対し、国側は「性風俗業は本質的に不健全。支給は国民の理解が得られない」と争う姿勢を示した。

 性風俗業のほかに給付対象外とされたのは、宗教法人と政治団体だけ。国は差別でなく「区別」だとしているが、他のほぼ全ての職業と「区別」する理由として、「不健全」は合理的なのか。さらに、働く人の立場を考えるとき、社会は今後も「区別」を続けていくべきだろうか。

 多くの疑問が残る国のコロナ対策を検証する際、憲法はさまざまな視点を与えてくれる。意見の分かれる問題こそ自由に語られていい。それも憲法が、私たちに求めていることの一つだ。

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