河北春秋(5/4):ご当地料理は旅の楽しみの一つだが、数年前…

 ご当地料理は旅の楽しみの一つだが、数年前に出張で訪れた山口県萩市では不意打ちをくらった。地場産の刺し身を一口食べると、しょうゆが甘かった。甘さを好むのは九州と聞いていたが、萩も同じとは思わなかった▼甘いしょうゆは色が濃く、慣れ親しんだものと異なるが、戸惑ったのは最初だけ。後は箸が進んだ。味を決めるしょうゆも、土地ごとに育まれるのだと今更ながら実感できた▼料理研究家の辰巳芳子さん(96)は、著書『いのちと味覚』で「あなたのいのちは、生まれた風土と切っても切れない関係」にあるとし、風土に即して食べる重要性を記す。食を大事にするのは、一食一食が命の刷新との思いが根底にあるからだ▼新型コロナ禍で、食料品を募って困っている世帯への支援に回すフードバンクの活動に注目が集まる。団体の一つ、NPO法人ふうどばんく東北AGAIN(富谷市)によると、昨年度に支援した食料は約96トンと、コロナの影響が加わり急増した▼一方で、支援活動への理解から「協力者が増えている」と東北AGAINの担当者。辰巳さんは、教えているスープ教室ではスープの向こう側に思いを巡らせられる人になってほしいと伝えているという。深刻な事態にあっても食を支え合う動きが広がるのは心強い。(2021・5・4)

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