社説(5/4):温室効果ガス46%削減/国際公約 実現に具体策を

 今世紀半ばに世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標に向け、国際社会がやっと一歩を踏み出した。バイデン米大統領が主催した「気候変動サミット」で、主要排出国がそれぞれ新たな目標を明らかにした。
 日本も2030年に13年度比で46%削減する目標を掲げ、菅義偉首相は「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と表明した。欧米各国が意欲的な削減目標を打ち出す中、従来目標の26%減から大幅な上積みを迫られた形だが、国際公約として自ら高いハードルを設定した点は評価していいだろう。
 日本の対応の遅れは、これまで国際的な批判を浴びてきた。安倍晋三前政権が産業界への配慮から、26%減という低い目標を維持してきたからだ。菅政権が昨年10月に宣言した「50年に実質ゼロ」も先行して120カ国以上が賛同していただけに、出遅れ感は否めなかった。
 世界の共通目標となっている「50年に実質ゼロ」は、地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」履行の必須条件だ。協定は今世紀末までの気温上昇を産業革命前に比べ2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指している。
 世界の気温は17年時点で既に産業革命前に比べ約1度上昇しており、多くの科学者は2度の上昇で地球は取り返しのつかないダメージを受けると警告する。どれほど対策を急いでも温暖化はすぐには止まらないため、1・5度は「引き返せない点」(ポイント・オブ・ノーリターン)とされている。
 問題は、日本の46%削減が従来目標の26%とは異なり、具体的な対策で見込める削減量を積み上げた数字ではないことだ。首相主導の政治判断で「見切り発車」的に示された目標だけに、まずは実効性のある具体策を早急に打ち出さなければ何も始まらない。
 最も重要なのは、排出量の約4割を占める電力部門での大幅削減だ。石炭火力発電からの撤退と再生可能エネルギーの拡充に力を尽くすべきだろう。今年改定する「エネルギー基本計画」で、将来の電源構成を大きく転換したい。
 脱炭素の加速をチャンスとばかりに、与党内では原発の新増設を求める声が高まっている。「発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない」というメリットばかり強調されがちだが、東京電力福島第1原発事故がいまだ収束していないことを忘れてはなるまい。
 今も立地地域に深刻な被害をもたらし続けている中、東電による一連の不祥事も加わって、再稼働にさえ国民の理解を得るのは難しくなっているのが実情だ。
 46%もの削減は産業界のみならず全ての国民の協力なくしては達成できない。原発依存の発想を断ち切り、生産から流通、暮らしまで、あらゆる分野で省エネとCO2の排出抑制に知恵を絞りたい。

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