<ハンセン病・熊本地裁判決20年>内藤雅義弁護士に聞く 荷担した責任、自治体も検証を

 強制隔離政策の誤りを全面的に認めたハンセン病国家賠償請求訴訟の熊本地裁判決は、差別を傍観してきた社会に大きな影響を与えた。20年を経て、元患者を取り巻く環境はどう変わったのか。国賠訴訟東日本弁護団で東北の原告を担当した内藤雅義弁護士(東京弁護士会)に聞いた。
(聞き手は生活文化部・片山佐和子)

 -判決はハンセン病問題への社会の関心を高めた。20年間でどう変化したのか。
 「偏見を過ちと考える人は増えた。一方、熊本県のホテルでの宿泊拒否問題など元患者に直接向く差別は依然根強く、解消の難しさも感じる」
 -青森市の松丘保養園や登米市の東北新生園など全国13の国立療養所の入所者は1090人で、平均年齢86・3歳(昨年5月現在)。元患者たちは地域との共生を模索してきた。
 「入所者も弁護団も『療養所丸ごとの社会復帰』を訴えてきた。ハンセン病問題基本法を機に保育所や老人ホームを設けた療養所には多くの人が足を運び、交流が生まれた。東北の療養所も地域住民を呼び込む仕組みを、さらに検討する必要があるだろう」
 「療養所の医師不足は深刻で、給与水準などの待遇改善が喫緊の課題だ。入所者の医療保障に加え、外来診療を充実させれば地域医療にも貢献できる」
 -2019年には元患者の子どもらが差別被害を訴えた家族訴訟の熊本地裁判決で国が敗訴。弁護団の一員として東北の原告を支えたが、状況は改善されたのか。
 「元患者による訴訟の判決は隔離政策の誤りが焦点となり、家族訴訟では社会の差別構造が指摘された。判決後も差別を恐れ、配偶者らに元患者との関係を話せない人は相当数いる。国による補償の申請数も、予想の約4分の1と低調だ」

改正感染症法、過ち再び

 -国賠訴訟の全国弁護団は今年1月、新型コロナウイルス対策の感染症法改正に反対の声明を出した。
 「国は患者の人権尊重をうたう感染症法に入院拒否者への罰則を盛り込んだ。強制隔離の教訓に学ばず、『怖い病気』と印象付けた。患者の排除ではなく、適切な医療の提供で患者や社会の不安を取り除くべきだ」
 -今後の課題は。
 「国は隔離政策が続いた原因を検証したが、地方自治体の取り組みは不十分。熊本県や大阪府は官民挙げて患者を排除した『無らい県運動』を踏まえ、強制隔離にどう関わったかを検証した。遅きに失したが、東北の自治体も隔離に加担した責任と向き合うべきだ」
 -差別克服に何が必要か。
 「差別された人々の思いを理解することだ。元患者や家族の声に耳を傾け、生きざまを知ってほしい。コロナ禍でもオンラインや動画を活用できる。学校教育の役割も大きい。教師の力に期待している」

ハンセン病問題の学習会で講演する内藤弁護士=2019年12月、仙台市青葉区のカトリック元寺小路教会

[内藤雅義(ないとう・まさよし)氏]1950年東京都生まれ。東京都立大卒。77年弁護士登録。被爆者が原爆症認定を求めて争う集団訴訟や薬害エイズを問う東京HIV訴訟などの原告側弁護も手掛けた。

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