<東北の本棚>音楽通じ心の復興発信

響け、希望の音/田中 宏和 著
 東日本大震災は、誇るべき古里の文化に大きな被害をもたらした。その半面で新たな文化を根付かせる契機にもなった。被災地の岩手、宮城、福島出身の子どもたちで構成する東北ユースオーケストラは、音楽を通して東北そして他の被災地、全国とつながっていくモデルを示した。オーケストラ誕生の経緯と、震災で傷ついた団員たちの心の復興を、広く知ってもらおうと書かれた少年少女向けノンフィクションだ。

 オーケストラは、米国を拠点に活躍する音楽家、坂本龍一さんによる支援活動をきっかけに生まれた。本書では団のこれまでの歩みのほか、子どもたちが参加した理由や将来の夢、音楽に寄せる思いなどが、多くの写真とともに紹介されている。

 被災地出身といっても、メンバーをひとくくりにすることはできない。沿岸部で家屋に直接被害があった子どももいれば、内陸部在住であまり影響がなかった人、中には親族を亡くした人もいる。目指す活動の方向性が異なれば、ぶつかり合うことだってある。それでも、オーケストラを愛する気持ちはみんな同じだ。

 文中には「間奏曲」としてメンバーら3人が、それぞれの3・11体験とオーケストラ活動を語る部分もある。震災当時小学3年だった三浦瑞穂さん(気仙沼市出身)は津波から走って逃げたが、多くの知り合いが亡くなった。生かされた自分たちは、自分のためだけに生きるのではなく音楽を通じて、元気にしている姿を発信したいと話す。音楽の素晴らしさを伝えるために、音楽の先生になりたいという。

 著者は、東北ユースオーケストラの事務局長として運営の柱になっている。著書に「田中宏和さん」など。本書の印税相当額はオーケストラの活動費に充てる。(又)

 フレーベル館03(5395)6613=1650円。

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