前例のない不適切な事務処理の結末は、トップの超法規的な政治判断による損失の全額穴埋めだった。
2019年2月、仙台市の道路照明灯問題が明るみに出た。撤去した照明灯の電力契約を解除し忘れ、計9200万円の電気料の過払いが発生。同時に契約漏れによる計2300万円の未払いも判明した。
委託業者に任せた解約手続きを市が事後に確認する仕組みがなく、長年、問題に気付かなかった。郡和子市長(64)は発覚直後の定例記者会見で「誰の責任と言い難く、職員による弁償は難しい」と語り、損失の穴埋めには否定的だった。
だが、東北電力と損失を事実上折半する和解案が決まった9月、市が負担する3400万円の半額を管理職が弁償すると表明した。市民や議会の厳しい視線を察知し、自身も給与カットするなど方針転換した。
10月の市議会9月定例会最終日、前年度決算が初めて不認定となり「確実な穴埋めを求める」と付帯決議を突き付けられると、今度は全額穴埋めにかじを切った。市役所内には異論があったものの「市民の信頼回復が必要」と押し切った。
郡市長が過去の不祥事を清算し、責任を明確にした「結果」には評価する声が少なくない。ただ、損失の弁償を巡り、方針が二転三転した対応には「身内に甘い」との印象を残した。
1989年の政令市移行後、歴代市長はいずれも生え抜きの市職員か中央官僚の出身者だった。郡市長は初めての「非役人」。当初は「黒船」にも例えられ、市役所内にはびこる古い体質の改革も期待された。
ところが、身構えた幹部職員たちの肩の力は早々に抜けた。郡市長は就任直後の局長会で「右から聞いたことが左に抜けてしまう。皆さん、こんな私を助けてください」と頭を下げた。
民主党衆院議員時代に復興政務官などを務めたとはいえ、行政経験に乏しい郡市長が職員1万人の巨大組織を動かすには、融和に徹するしかなかった。今では「話を聞いてくれる市長」と職員の評価も悪くない。
2017年8月の前回市長選で郡市長を支えた市民団体の一員で、生活協同組合あいコープみやぎの多々良哲顧問は「1期目は右も左も分からず市政を進めなければならない。役所内部や議会に気を使い、郡カラーを出せていない」と分析する。
郡市長は市役所改革の合言葉として「創例主義」を掲げる。幹部職員への訓示などで、前例にとらわれず挑戦の気概を持って職務に当たるよう求めるが、目に見える成果は出ていない。
外郭団体改革も道半ば。19年度決算によると、市が投じた補助金や委託金の総額は、3年前より約5%増えた。1期目の4年間は統廃合の動きすらなかった。
「人事や議会対応を担う総務系職員が出世し、手堅い運営が是とされる庁内の文化」(市幹部)にも新風が吹き込んだ形跡はない。
副市長2人は市職員出身。3人目は空席のままだ。「せめて気心知れた副市長がもう1人いれば、やりたいことができただろう」。郡市長の支援者が指揮官の苦悩を代弁した。
(報道部・古賀佑美)
[仙台市の道路照明灯問題] 撤去した道路照明灯の電力契約1729件の解除を忘れ、計9200万円の電気料過払いが判明。261基の契約漏れも発覚し、計2300万円が未払いと分かった。東北電力と協議し、同社が発光ダイオード(LED)化事業の協力金4600万円を市に寄付して過払いを折半。未払いは時効を踏まえ、市がほぼ半額の1140万円を支払うことで和解した。市の損失は課長級以上の職員の親睦会費から穴埋めし、退職者にも協力を要請した。
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