「検証・郡市政」(上)公約 いじめ対策の浸透 道半ば

いじめ対策を検証する有識者会議から報告書を受け取る郡市長(右)=1月28日、仙台市役所

 任期満了に伴う仙台市長選(7月18日告示、8月1日投開票)は告示まで2カ月を切った。立候補表明は依然ゼロだが、現職の郡和子氏(64)は再選出馬が確実とみられ、選挙戦になれば市政運営の評価が重要な争点となる。「『いのち』を守る」「『SENDAI』を創る」を公約に掲げて初当選し、前市政との差別化も目指した1期目の成果と課題を検証する。

 2017年の前回市長選で、郡氏が公約の「一丁目一番地」に据えたいじめ対策。4年間で形は整えたものの中身が伴うまでは至らず、道半ばとなっている。

 市内では14年9月以降、いじめを苦にした男子中学生の自殺が、3件続けて起きた。郡氏は選挙戦で市の対応を厳しく批判。市長就任後、いじめ防止条例の実現に真っ先に取り組み、19年4月に施行した。

 市長部局の子供未来局には18年4月、いじめ対策推進室を新設。学校や市教委に不信感を抱く児童生徒や保護者のため、20年6月には弁護士や学識経験者が相談に応じる市いじめ等相談支援室「S-KET(エスケット)」も開設した。

 目に見える形で次々と施策を打ち出す一方、基本となる条例の浸透は緒に就いたばかり。毎年度、市のいじめ対策を検証する有識者会議は「学校間で研修の量、教職員の資質向上への意識に差がある」など厳しい評価を市長に向けている。

 信じ難い不祥事も続いた。19年9月は宮城野区の中学校で教員が指針違反と知りつつ、いじめの被害、加害生徒の名前や事案概要が書かれた資料を誤って配布。20年12月には泉区の小学校で、児童のいじめ実態調査の回答を講師が改ざんした事実が明るみに出た。

 自殺した男子生徒3人の遺族を支える全国自死遺族連絡会(仙台市)の田中幸子代表理事は「最も大事な現場の意識改革が後回しになっている。いじめ対策はパフォーマンスに終始してほしくない」と指摘する。

 郡氏が市長選で掲げた公約のうち、成否の評価が割れる重要施策もある。

 19年1月に始まった「奨学金返還支援事業」。市内に本社・事業所を置く中小企業に20~22年度就職した学生らに対し、入社後3年間、年18万円を上限に奨学金の返還資金を援助する。

 公約は「仙台版『給付型奨学金』創設」だった。若者の地元定着を狙った点は一致するが、在学中に給付する公約に対し、返還支援事業は卒業後に支給する。

 国が18年度に給付型奨学金を始めたため、卒業後の負担軽減にシフトさせた。郡氏は18年11月の事業の素案発表時、「公約に即した形でまとめた」と達成を強調したが「話が違う」と首をかしげる市民は多い。

 返還支援事業は1年目の19年度、先着70人の募集に応募は65人にとどまった。新型コロナウイルス感染が広がり、就職環境が激変した20年度は募集枠を140人に倍増したが、応募は115人と埋まらなかった。

 ニーズとのギャップを指摘するのは、市民団体「みやぎ奨学金問題ネットワーク」。20年3~6月、宮城県内の大学生に実施したインターネット調査で、既存の給付型奨学金の使いにくさ、在学中の支援などを求める声が多く寄せられた。

 事務局長の草苅翔平弁護士は「コロナ下の厳しい経済状況で学生の不安は増している。若者の地元定着を図るというなら、やはり市独自の給付型奨学金を再検討すべきだ」と強調した。
(報道部・伊藤卓哉、布施谷吉一)

[仙台市いじめ防止条例]2019年4月施行。「社会全体で子どもたちをいじめから守る意識を醸成する」を理念に掲げる。学校、市教委、保護者、地域などの責務を明記し、教員の体罰や不適切指導を禁止。児童生徒の地域行事への参加を保護者の努力義務と規定した。いじめ防止対策の取り組み状況は毎年度、市いじめ防止等対策検証会議が点検し、報告する。

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