社説(6/4):被災地での伴走型支援/課題解消へ制度化検討を

 東日本大震災は被災者支援の在り方に再構築を迫ったといえよう。一人一人の状況に応じて生活再建を目指す「伴走型」の支援活動が進んだ。災害ケースマネジメントと呼ばれる。
 申請や相談を待たず、被災者への戸別訪問を通してニーズや課題を把握。個別に生活再建計画を作り、官民が連携して支援を続ける手法を指す。震災では仙台市や大船渡市が取り組んだ。
 仙台市の支援は災害ケースマネジメントの先駆けと称される。仮設住宅の入居世帯が持つ課題に対し(1)生活再建可能(2)日常生活支援(3)住まいの再建(4)日常生活・住まいの再建-の各類型に区分。1年かけて全戸を訪ねるなどし、17年3月末までに市内被災世帯の住まい再建につなげた。
 民間の人材も積極活用した。全戸訪問は市シルバー人材センターに委託。「ベテラン市民」が生活再建支援員を務め、訪問で得た情報を個別サポートに役立てた。
 伴走型支援は2016年4月の熊本地震や18年7月の西日本豪雨の被災地でも実践され、有効性が示された。従来の支援が届かず、壊れた自宅で暮らす「在宅被災者」に目が向く機会になった。
 震災から10年を経た今も、支援を巡る課題は多い。
 災害ケースマネジメントの規定や責務はない。熊本地震などの被災地で支援活動の財源になったのは、震災後に国が設けた被災者見守り・相談支援事業だ。市町村が支援拠点を構え、国は19年度から一般事業化している。見守り活動に限らず、生活再建支援に拡大すべきだとの要望は少なくない。
 自治体の裁量で内容を手厚くできるが、見方を変えれば市町村によって被災者対応に温度差が生じかねない。日弁連や東北弁護士連合会は災害ケースマネジメントの制度化を求めており、国は前向きに検討してほしい。
 災害法制の隙間も埋まらない。被災住宅への支援制度には、災害救助法による応急修理制度と被災者生活再建支援法に基づく支援金がある。国は19年以降に支給の範囲を拡大したが、支援法の「全壊10世帯以上の市町村」といった適用条件は変わっていない。25都府県が独自の支援策を制度化し、適用外の事態に備えているという。
 制度を研究する団体からは、応急修理の対象を一部損壊に広げるなど、きめ細かな制度設計を望む声が上がる。必要な支援が届くように「つなぎ先」となる福祉分野との連携が不十分との指摘もあり、改善を図りたい。
 切れ目ない支援の実現には、被災者が多様な課題を背負うとの前提に立った取り組みが不可欠だ。災害ケースマネジメントが浸透すれば、地域福祉の向上にも結び付く。相次ぐ災害で浮かんだ問題点を解消する意味でも、各種制度の充実を急ぎたい。

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