<東北の本棚>出版業界の危機論じる

本屋と図書館の間にあるもの/伊藤 清彦、内野 安彦 著

 一関市の元一関図書館副館長の伊藤清彦さんと長野県塩尻市立図書館長などを務めた内野安彦さんの対談集。出版不況や書店激減の原因を公共図書館と結び付ける風潮に警鐘を鳴らし、書店と図書館の役割や関係性について存分に論じた。

 盛岡市のさわや書店に2008年まで勤めた伊藤さんは、書店発のベストセラーを生み出すなど独創的な販売戦略で知られた。対談2カ月後の昨年2月、65歳で急逝。伊藤さんのエッセーや交友があった人々の寄稿を加え、追悼集として刊行された。

 対談で、伊藤さんは反知性主義の広がりや人材の使い捨てが、出版業界の危機を招いた一因とみる。書店員や図書館司書は経験や知識の蓄積が「最低でも10年は必要」。だが、多くの人は不安定な非正規雇用で「守る仕組みがない」と指摘する。長く公務員を務めた内野さんは図書館の資料費を増額し、「市民の読書環境の充実や地元書店の救済を図るべきだ」と強調。図書館側に、自らの存在意義を首長や議員らに「不断に訴える政治力」を求めた。

 書店減少に歯止めがかからない現状を受け、「図書館は知の拠点としての役割が増す」と伊藤さん。地方の先進事例も紹介し、内野さんと閉架書庫の蔵書活用や郷土の出版社との連携などアイデアを出し合う。

 3部構成。対談に続く第2部は、岩手日報に11~19年に掲載されたエッセーなどを再掲した。読書の楽しみ方もつづられる。興味を持った1冊を読むのは「点型の読書」。作家の他作品や参考文献も読み、「線型の読書」で世界を広げようと呼び掛ける。第3部は元同僚らによる追悼文。巻末に、伊藤さんが紹介した本の一覧が載る。読書欲が刺激され、書店や図書館に足を運びたくなる一冊でもある。(和)

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 郵研社03(3584)0878=2420円。

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