<手腕点検>利府町・熊谷大町長 町のPRに躍起 地域課題は山積

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

観光ツアーに同行し、自ら町をPRする熊谷氏(左)=4月18日、利府町赤沼

 「将来的に市制移行を目指す」。熊谷大町長(46)は、現行の利府町総合計画(2021~30年度)で野心的な目標を掲げた。

 町の人口は約3万6000。市制要件の5万人に1万4000人足りず、最近は横ばいで推移する。町職員から「現実的なのか」との疑問の声も上がっていたが、「大きな目標を町全体で目指し、地域を活性化させる」と意義を説く。

 元参院議員の熊谷氏は、連続5期務めた鈴木勝雄前町長(77)の引退に伴う2018年の町長選で初当選。前町政を継続しながら、シティーセールスに力を入れるなど独自色を出す。

 「全国的に利府を有名にする」がモットー。町ゆかりの冬季五輪金メダリスト荒川静香氏ら7人と1団体を観光大使に任命したほか、県内の大学で学生に町の魅力をアピールした。発信力強化を狙い、20年4月には秘書広報班を設けた。

 さらには、豊かな発想力で新風を吹き込む。ふるさと納税では一日町長体験、町出身女子プロレスラーによる観光ツアーなど従来の枠を超えた「返礼品」を導入。寄付額は、就任前の17年度の3400万円から20年度は2億円を超すまでになった。桜井やえ子副町長は「町がメディアに取り上げられる機会は格段に増えた」と実感を込める。

 一方でアイデア先行型の発言は唐突感が否めない。市制移行の目標に限らず、「町を流鏑馬(やぶさめ)の聖地にする」「モータースポーツの誘致」などの発案に、一部の町職員や町議は「突拍子もない」と批判する。

 議会対応にも注文が付く。19年の町議会12月定例会では、公約に掲げた小学6年生と中学3年生の給食費を無償化する条例案が否決された。議員側への事前の相談が不十分で、元議長の渡辺幹雄町議(72)は「新たな取り組みに挑戦する姿勢は評価できるが、議員に歩み寄る姿勢が足りない」と指摘する。

 「目線を下げるべきだ」と鈴木前町長はくぎを刺す。「全国的に有名になって町民にどんなメリットがあるのか。『側溝が詰まった』『道路がへこんだ』など身近な困りごとを解決することが役目だ」と訴える。

 今夏には大型商業施設や文化複合施設が相次いで完成する。町の潜在力が高まる一方で、公共交通の充実や交通渋滞の解消、高齢化の進む団地住民へのケアなど、避けては通れない地域課題は山積している。

 アイデアを打ち出すだけではなく、足元のニーズも見極めながら成果をどう積み上げていくか。着実に具体化させる実行力が問われる。
(多賀城支局・石川遥一朗)

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