<東北の本棚>知られざる郷土史発掘

伊達一族の中世「独眼龍」以前/伊藤 喜良 著

 伊達家、伊達一族と聞けば、多くの人が「独眼竜」で知られる仙台藩祖・伊達政宗とともに仙台の街を思い浮かべるだろう。仙台城を拠点に62万石の栄華を誇った江戸期の260年は、明治以前では一族の後半期に当たる。

 それより昔、一族はどの地でどのような歴史を紡いできたのか。鎌倉期から戦国初期までの360年にわたり、一族が福島盆地(現在の伊達市、福島県伊達郡など)を拠点に東北屈指の戦国大名へと成長を遂げた軌跡をたどる。

 仙台のイメージが濃い伊達一族のルーツが福島にあることは地元でもあまり知られていないようだ。米沢、岩出山(大崎市)を経て仙台に居城を定めた時代とは異なり、文献や史料が格段に乏しい。著者は一族と福島盆地とのつながりを強く意識しながら、諸系図や県内の発掘調査の成果などを手掛かりに、多くの謎に迫る。

 「守るにやすく、攻めるに難い」地形とされた福島盆地。地の利を十分生かした戦いで、一族は戦国奥羽の覇者となる礎を築く。この間、鎌倉幕府の崩壊や室町幕府の成立があり、時の権力との関係が勢力図に影響を及ぼした。

 室町期に入ると、跡取りの実名に付ける通字が「長」から「宗」に交代したとの見立ては興味を抱かせる。「宗」の始祖となる大膳大夫(だいぜんのだいぶ)政宗(1353~1405年)は、宮城県方面に勢力を広げ「中興の祖」と称された。江戸期の伊達藩主につながる「正統」な血統の最初の人物であり、独眼竜政宗の名にも由来する。

 著者は福島市在住で福島大名誉教授。2011年の東日本大震災、東京電力福島第1原発事故の後、福島県文化財保護審議委員として県内を巡り、あまりの惨状に衝撃を受けたという。

 現況に胸を痛めながら、郷土の知られざる史実を掘り起こし、次代に伝える。意欲に満ちた取り組みが実を結んだ。(志)

 吉川弘文館03(3813)9151=1980円。

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