フェリーの船旅、仙台港から手軽に優雅に 苫小牧~仙台~名古屋を結ぶ 「海の日」に合わせ紹介

「きたかみ」船内を動画で紹介
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 仙台港を発着する太平洋フェリーは、苫小牧(北海道)と名古屋(愛知県)を結ぶ海の大動脈。環境に優しい物流手段として、また、ゆったりとした旅が楽しめる公共交通機関として注目されている。一昔前の「狭い船内に雑魚寝」というイメージは一変し今は個室や1人用の寝台が中心。展望大浴場やレストランを備えたホテルのような空間が広がる。コロナ禍においては、乗船時の体温チェックや手指の消毒、密にならないよう浴場やレストランの利用制限といった感染対策を徹底しながら日々運航が続く。「海の日」を前に、意外と知らない仙台発のフェリー旅について、「きたかみ」船内の動画とともに紹介する。
(編集局コンテンツセンター・藤沢和久、上田敬)

ペットOKの客室も

 「目的地に行くだけなら、電車や飛行機にかないません」と話すのは、パーサー(事務長)の千葉嘉征(よしゆき)さん(48)。仙台―苫小牧はおよそ15時間。飛行機だと仙台―新千歳空港間は1時間15分ほどなので比較にならないが、その分、旅客には「船で過ごす時間そのものを楽しんでほしい」と話す。大浴場では、大海原を見ながらゆったりと湯船に漬かることができる。公共スペースの窓際にはカウンターがあり、外を眺めながら読書を楽しむ船客も少なくないという。
 特等和室は障子や畳が落ち着いた雰囲気を醸し出し、大きな窓が足元近くまで広がる。浴室にも窓があり、開放感を味わえる。2段ベッドを組み合わせた秘密基地のような空間が広がる1等客室、壁で区切られドアに鍵を掛けられるエコノミーシングル、カプセルホテルのようなB、C寝台まで、「きたかみ」の客室はすべてプライバシーが確保されている。
 ペット同伴の旅にも人気だ。ペットハウスに隣接する甲板上に約15平方メートルのペットテラスが設けられ、外に出して遊ばせることもできる。「1等ウィズペット」の客室は室内にケージがあり、家族同様に過ごせる。水飲みの器具や、臭いがこもらないよう空気清浄機も完備されている。
 トラック運転手らプロドライバー向けとして、一般客は立ち入り不可の専用区画もあり、浴室や談話室も備える。一人で長時間ハンドルを握ることが多い運転手にとって、仕事仲間と顔を合わせて一緒に過ごせる船内は、貴重なひとときになっているという。
 受け付けやレストランで接客を担うのはアテンダントの川崎寿奈さん(21)。休日には400ccのバイクに乗ってツーリングを楽しむ。おすすめの行き先は「青い海がきれいで、ウニもおいしい」という積丹半島。旅行好きで、まとまった休みが取れることに魅力を感じて船の仕事を選んだ。「毎月ゴールデンウイークがあるようなもの」と笑う。
 きたかみの船長は川尻稔さん(53)。海面からの高さ25メートルのブリッジに陣取り、巨大な船を指揮して大海原を進む。仕事の魅力を聞くと「乗船日が嫌で、下船日が何より楽しみ」と冗談めかす。船のクルーは4時間勤務、8時間休憩というローテーション。20日間は船上、10日間は陸上で生活する。下船日になり、重い責任と特殊な生活から解き放たれる瞬間は特別な気分になるようだ。

環境に優しい交通手段

 車に比べ二酸化炭素(CO2)排出量が少なく環境に優しい交通手段としても注目されている。日本長距離フェリー協会のウェブサイトによると、10トントラックで「陸路と青森―函館航路を利用して移動した場合」と、「仙台―苫小牧間をフェリー利用した場合」を比較すると、CO2排出量が85%削減できると試算されている。
 コロナ禍で太平洋フェリーも大きな影響を受けた。19~20年度の比較では、貨物部門の収入は1割減だったが、旅客部門は6割減と苦しい状況が続く。同社東北支店旅客担当の山本法子さん(31)は「これからも旅行や物流の担い手として地域経済を支えるとともに、船旅を通して皆さまに安らぎをお届けできるよう全社一丸となって取り組んでまいります」と語る。
 コロナ禍の収束は見通せないが、自由に旅ができる状況が戻ってきたら、仙台港で唯一の長距離航路を使った北海道や中部地方への船旅の人気が一段と高まりそうだ。

川尻船長、仙台港で東日本大震災に遭遇

 「きたかみ」の川尻稔船長(53)は10年前の3月、旧きたかみの船長として仙台港で東日本大震災の地震と津波に遭遇した。
    ◇      ◇
 朝に入港して乗客が降りた後で自室でくつろいでいたところ、揺れを感じた。ブリッジに来たら、何かにつかまらないと立っていられないほどのものすごい揺れ。港の岸壁が崩れ落ちていくのが見えた。とにかく長い揺れだったのを覚えている。震源が海だったら津波が来るだろうと考えて出港準備を指示した。
 大きな船なので通常はエンジンを起動して暖めたり、係留ロープを外し開口部を閉じたりといった作業で1時間ほど掛かるが、乗組員が機敏に動いて午後3時には準備ができた。
 津波に対しては「広いところ、深いところ」が基本なので、まずは金華山沖へ進路を取った。他船で前が数珠つなぎとなり、港を出るのに通常は25分ほどだが、40分ぐらい掛かった。津波の遭遇は午後4時前。4~5キロ沖まで来たところで、レーダーに映像が映った。初めて見たが、こんな写り方をするのかと。見渡す限り壁のような高さの津波が視界に入った。船首を直角に向けて迎えた。今まで見たことのない「壁」だから、正直怖かった。ただ、どこにも行くところがないので乗り越えるしかない。
 優に10メートルはあっただろう。相当な衝撃を受けた。7、8メートルの波という経験はあるが、壁になって波が来るのは初めて。それまでは海が穏やかだったのに、急に山に登って落ちるという感覚だった。結果的に船の損傷はなく大丈夫だった。
 第1波に続けて同じような波を3度ほど受けた。しばらく金華山沖で待機した後、苫小牧に向かった。津波で多くの物が流されているだろうと考え、通常の航路よりもやや沖合を進んだ。余震による津波への警戒もあった。12日昼ごろに苫小牧沖に着いた。
 (港湾関係の)宮城県の人が徹夜で作業してくれたおかげで2週間後には戻ってこられた。仙台港は何もなくなっていた。反対の岸壁には外国の船が打ち上げられていた。その後は支援物資や自衛隊、警察、消防の人員を運ぶ仕事に当たった。フェリーの特色は岸壁にランプ(貨物用の出入り口)が設置できれば車を降ろせること。コンテナのように機械が必要な訳ではない。ブルドーザーやショベルカーなどかなりの数の重機を運んだ。その後、一般旅客を乗せて営業再開できたのは4月末だった。

【乗船ガイド】運賃は仙台―苫小牧9000円から、仙台―名古屋7800円から。仙台―苫小牧の乗用車運賃は1万7600円(5メートル未満)、オートバイ7000円(50cc超400cc以下)、自転車2500円など。女性専用室もある。運賃は大型連休や夏休みなど時期によって変動する。問い合わせは同社予約センター022(388)8757

太平洋フェリーのウェブサイト

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