仙山連携促進へ交通網強化を 山形市長・佐藤孝弘さん<コロナ後の仙台市政に提言>

 仙台市長選(8月1日投開票)は選挙戦の折り返しを迎えた。目下の重要争点は喫緊の新型コロナウイルス対策だが、収束後を見据えたまちづくりの論戦も期待される。ポストコロナの仙台はどこへ向かうべきなのか。各分野の有識者に聞いた。

 ―仙台、山形両市が2016年11月、仙山圏の活性化に向けた包括的な連携協定を結び、5年を迎える。

 「山形市民の意識がかなり変わった。(15年9月に)1期目の市長就任時は仙台とつながると、のみ込まれるという論がかなり強かったが、アレルギー的な意識が完全になくなった。むしろ、今は良好なパートナーシップを築こうという感覚の方が強く、仙山交流は当たり前になってきた」

 「行政同士の交流も当然になり、職員の意識が変わった。やりとりが増え、両市の仙山交流担当部署はもちろん、防災、観光関係も一緒にPRすることが普通になった。東日本大震災で山形が支援拠点になった背景があったにせよ、県境という心理的なハードルがほぼ消えた」

 「仙山間の通勤・通学も増えてきたし、山形の企業は仙台、宮城も商圏としつつある。(両市の)商工会議所や経済団体の交流も深まり(仙山連携が)特別なことでない状況になった」

 「仙台市民は以前から、休日になるとマイカーやJR仙山線を使って、山形市に遊びに来る。ある意味でレジャーランド的に山形を活用している。行き先はマニアックになりつつある。例えば、日帰り温泉なら山形市内の百目鬼(どめき)温泉を選ぶとか、地元住民しか行かなかった場所に仙台、宮城ナンバーの車が止まるようになった。これも協定を結んだ成果だろう」

 「通勤通学の行き来やビジネスのやりとり、休日は市民が互いに遊びに行くなど、それぞれの分野で仙山連携が前に進んでいる」

多様な都市機能が集積する仙台市中心部

 ―新型コロナウイルスの感染拡大が仙山連携に水を差す格好になった。

 「せっかく交流が活発になったところで、また県境が『壁』になってしまった。5年かけて醸成してきた機運がしぼんでいるのは残念。特にインバウンド(訪日外国人客)は完全にリセットされた。仙台空港から仙台市を経由し、山寺などがある山形市を楽しむパターンができつつあったが、無くなった。コロナ後は旅行の在り方が変わってしまうだろう。これをどう再構築するかが課題となる」

 「まずは国内旅行の需要が回復してくる。これまでも団体旅行から家族旅行、個人旅行にシフトしていたが、新型コロナで拍車がかかった。マイカー観光がかなり増えている。近隣からだけでなく、名古屋からマイカーで山形に来た人もいる。こうした変化にどう対応するかが重要になる」

 「ただ、長期的には高齢化でマイカー以外の観光が増える。仙台は循環観光バス『るーぷる仙台』で市中心部を周遊できるが、今の山形市は公共交通が弱く、観光するなら車の方が効率よく楽しめる。来年度からようやく、山形の公共交通にICカードが導入される。仙山間の高速バスも同様。もっと便利になる」

 ―コロナ下で見えてきた仙山連携の在り方は。

 「感染症は交流や人のつながりを分断する。どうしても『県境をまたぐ移動は控えましょう』と言わざるを得ない。新型コロナが収束しても、感染症のリスクは今後もあり得る。今回の教訓を最大限に生かさなければいけない。身に染みて分かったのは分散居住やテレワーク、移住などに関し仙台、山形は魅力があるということ。首都圏のような巨大都市は感染症に弱く、東京一極集中の弊害も叫ばれている。仙山圏に魅力があることを両市から共に発信できればいいと思う」

通勤・通学のため、仙台行きの高速バスに乗り込む人々=山形市の山交ビルバスターミナル

 ―山形市はこのほど仙山連携を強化する指針となる調査報告書をまとめた。

 「仙台市と協力してパーソントリップ調査を実施し、人の動きを把握した。仙山同様に県庁所在地が隣り合う京都・大津、福岡・佐賀、近接する名古屋・岐阜も分析した。仙山は互いに異なる都市機能、レジャーを含めたアクティビティーがあり、通勤通学やビジネスで相互交流、行き来があるのがいいところ。名古屋・岐阜などは、岐阜から一方的に名古屋に行く状況がある。その点では京都・大津の補完関係に近い」

 「京都・大津は(エリアとして)トータルの人口が増えている。京都には大学が多く、学生も多い。ベッドタウンとしてなのか、大津も人が増えている。大津に住んで京都に通うため、大津の方が増加率が高い。そこは示唆に富んでいる」

 「仙山圏は東京圏への転出が多く、この違いが大きなポイントだと思う。できるだけ仙山圏に人が残る方向が望ましい。地元定着には仕事や生活の利便性、地域の魅力などさまざま要因があるが、それを両市単独ではなく、仙山圏で確保できれば可能性は広がる」

 「そのために(仙山圏内の)交通を便利にする必要がある。山形に住みつつ仙台を職場にする人、仙台に住んで山形で働く人。ここを増やすことが定着につながる。JR仙山線の強化はその一つ。巨額の費用が掛かるため一朝一夕に行かないが、できることとしてICカード導入がある。仙山線をもっと便利にする方策を勉強中。仙台市にも関心を持ってもらいたい」

仙山圏の活性化を目指す包括的な連携協定を結んだ佐藤市長(左)と当時の奥山恵美子仙台市長=2016年11月2日、仙台市役所

 ―東北は人口などの「仙台一極集中」が顕著だ。

 「日本全体の構造なのだろう。人の流れは最終的には東京に行き着く。ただ、その中で極力流出を抑えたり、戻らせたりする努力を続けなければいけない。仙台は東北の中で人口流出を止める核。仙台から遠い地域は吸い上げられる感じだろうが、山形市を含め隣接自治体は仙台とうまく補完できている」

 「これからの都市間競争はエリア間競争の要素が強い。隣町同士が争っても意味がない。山形市は二重性がある。県庁所在地の山形市、仙山圏の山形市と二つの顔がある。県都として都市機能を維持しなければいけないが、隣の仙台市は4倍の人口があり、こちらにない多様な都市機能を持っている。山形は自らの都市機能に加え、仙台の都市機能を活用でき、生き残りにはプラスだ。仙台にとってもウィンウィン(相互利益)の関係ではないのか」

 ―今後の仙山連携にどんな戦略を描いているか。

 「仙山交流が活発になるほど災害時の帰宅困難者は多くなる。その対応は行政的に重要な問題。雨の降り方も変わってきているし、毎年どこかで災害が発生している。防災・減災は仙台の方が経験値が高い。震災の経験もあるし、災害が発生した地域に職員も派遣していて、防災担当者も詳しい。災害時のリスクを仙台とカバーできればいい」

 ―仙台市に求める役割は何か。

 「仙山圏の大きなプレーヤーだ。(109万人という)人口の塊と経済的なパワーがある。周辺自治体が持つ資源と相互補完するような連携ができればいい。協定は奥山恵美子前市長時代に締結したが(17年8月に就任した)郡和子市長も山形には親近感を持ってくれている。引き続き、仙山連携に力を入れるスタンスだった。この先、両市のトップが交代する時が来たとしても、仙山交流は揺るがず、生活圏の構築を目指していく状況は変わらない」
(聞き手は報道部・伊藤卓哉)

仙山圏の可能性を語る佐藤市長

[さとう・たかひろ]北海道函館市出身。東大卒。経済産業省職員、東京財団研究員を経て2011年の山形市長選に立候補し、落選。15年の同市長選で初当選した。現在2期目。山形県市長会長を務める。45歳。

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