社説(8/10):カーボンプライシング/対応遅れた日本 決断急げ

 有力な地球温暖化対策の一つとして、国際社会がカーボンプライシングの本格導入に向けた議論を始めた。政府内でも環境省と経済産業省がそれぞれ検討を進めており、年内に結論をまとめる予定だが足並みはそろっていない。

 2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると宣言した菅義偉政権は、世界の動向を踏まえ、早急に基本的な姿勢を固める必要がある。

 カーボンプライシングは二酸化炭素(CO2)に価格を付け、排出に費用負担を求める仕組み。負担を減らそうと排出削減に努める企業や消費者が増えれば、地球温暖化対策につながる。

 代表的な手法には、排出量に応じて課税する「炭素税」のほか、あらかじめ排出枠を設定して上限を超えた分や余った分を売買する「排出権取引」などがある。

 世界銀行によると、既に64カ国・地域がカーボンプライシングを導入し、世界排出量の2割をカバーするまでになっている。

 日本も12年に炭素税の一つで、化石燃料の税率を上乗せする「地球温暖化対策税」を新設。国民も光熱費などの一部として支払っているが、負担は諸外国に比べ大幅に低く、排出抑制にはつながっていないのが実情だ。

 イタリアで先月開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、持続可能な経済への移行に向け、カーボンプライシングを含む幅広い手法を組み合わせていくことの重要性が共同声明で指摘された。10月のG20首脳会合で、制度全般への支持を打ち出す方向だ。

 一方、政府内では炭素税の導入に前向きな環境省と、産業界への配慮から消極的な経産省が並行して議論を進めている。環境省の有識者会議では6月、CO21トンに1万円の炭素税をかけた場合でも、税収を企業の省エネ設備投資への助成などに充てれば、CO2削減と経済成長を両立できるとの試算結果が示された。

 だが、経産省は企業が自主的に参加する排出権取引市場の試験運用を22年度に始める方向で、炭素税など強制的な措置には慎重な姿勢を崩さない。脱炭素技術が未確立な鉄鋼業界などを中心に、排出削減効果を疑問視する声が産業界に根強いためだ。

 炭素税を先行導入した北欧などは、既に排出削減と経済成長の両方を実現している。欧州連合(EU)は、炭素規制が緩い国からの輸入品に課税する「国境調整措置(国境炭素税)」を23年にも採用する予定で、米バイデン政権も同様の政策を掲げている。

 日本企業が積極的に排出削減に取り組み、その成果を評価してもらえなければ、輸出産業は痛手を受けかねない。

 決断が遅れれば、税制全体の整理や中小企業の支援なども後手に回る恐れがある。残り時間は限られている。

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