「リボーンアート・フェス」アート部門キュレーターの窪田研二さん 硬直した精神ほぐす キーマンに聞く(下)

 宮城県石巻市の市街地と牡鹿半島を舞台に繰り広げる現代アートと音楽、食の総合祭「リボーンアート・フェスティバル」(RAF)が11日、開幕する。東日本大震災から10年の節目に、文化芸術はどのように被災地再生の力になるのか。実行委員長で音楽プロデューサーの小林武史さん(山形県新庄市出身)と、アート部門キュレーターの窪田研二さんのキーマン2人に話を聞いた。

 -石巻市の市街地や牡鹿半島、宮城県女川町の6エリアで総勢23組のアーティストが作品を発表します。キュレーターとして意識したことは。

 「RAFのテーマ『利他と流動性』をどう解釈し、展覧会に反映するかが大きな柱。作品にテーマが感じられ、考えるきっかけを与えてくれるアーティストに参加してもらった。震災から10年の節目やアートがコロナ禍の社会でどう機能するかという点も重視した」

 -会場は石巻市の市街地と牡鹿半島に分かれました。

 「人が暮らす場所、自然豊かな場所と展示環境がそれぞれ異なる。市街地は人間の営み、社会や人間同士の関係を意識させる作品が集まった。牡鹿半島エリアの作品は人と自然、人と動物、生命と非生命との関係を感じさせる」

 「新たに加わった女川会場には、オノ・ヨーコさんが世界各地で続ける参加型作品『Wish Tree』がある。来場者は願いを書いた短冊を約3メートルの若いツバキにくくり付ける。近くには震災遺構の旧女川交番や海が広がり、見る人の創造力をかき立てるだろう。オノさんも女川という特別な場所での発表を非常に喜んでいると聞いている」

 -RAFを通じて復興をどう捉えていますか。

 「震災後からアートを通じた復興支援に関わり、定期的に石巻を訪れてきた。ハード面ではかなり整備が進んだと感じるが、人々の心の内までは分からない。(心の復興という視点から)さまざまな体験や悲しみを抱える人たちと共に、アートを通じて何かをつくれないかと考えてきた」

 「高橋匡太さんの『光の贈り物』では、石ノ森萬画館(石巻市)の外壁をライトアップする。地元の人から『会いたい人に届けたい色』を募り、日替わりで色を変える。会期中は色にまつわるエピソードを地元のラジオや新聞で紹介する」

 -コロナ禍におけるアートが社会に果たす役割は。

 「オンラインによるコミュニケーションが広がり、芸術分野で映像や音楽の配信が増えた。配信に向く表現もあるが、会場に足を運んで作品と対峙(たいじ)するリアルな経験はアートにとって生命線。作品を通して人々の硬直した精神をほぐし、従来とは違った考え方や生き方を提示できるだろう」

[くぼた・けんじ]早大商学部卒。上野の森美術館、水戸芸術館現代美術センター学芸員を経て独立。「第6回アジアン・アート・ビエンナーレ」(台湾)をはじめ国内外の展覧会を多数手掛ける。学習院女子大非常勤講師。55歳。東京都出身。

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