「リボーンアート・フェス」実行委員長の小林武史さん 復興の思い響く場に キーマンに聞く(上)

 宮城県石巻市の市街地と牡鹿半島を舞台に繰り広げる現代アートと音楽、食の総合祭「リボーンアート・フェスティバル」(RAF)が11日、開幕する。東日本大震災から10年の節目に、文化芸術はどのように被災地再生の力になるのか。実行委員長で音楽プロデューサーの小林武史さん(新庄市出身)と、アート部門キュレーターの窪田研二さんのキーマン2人に話を聞いた。

 -3回目となる今回のテーマは「利他と流動性」です。

 「資本主義で自由競争が激化し、やりたいことをやるために勝ち抜いて、頂点を目指す社会。人々を救うための経済は、金稼ぎへと目的が変わり、利己が暴発している。人間は種の存続ではなく、個の自由を選ぶようになった」

 「震災時は多くの人が東北に集まり、出会い、高まる流動性の中で、他人を思いやる気持ちが膨れ上がった。新型コロナウイルスの影響で社会は分断され、不安定になっている。芸術祭を通して人々がもう一度つながり、利他の感覚を思い出してほしい」

 -新型コロナ感染防止のため、2年に1度の芸術祭を、夏、来春と初めて分けて開催します。

 「春の新緑が芽吹く牡鹿半島は、夏とはまた違う雰囲気だ。医療体制の面から断念した網地島の会場も、春には落ち着いて実現できたらとの望みもある。分散開催は結果的に、興味深いアピールの仕方になるのではないか。感染状況によっては、中止も当然あり得ることを念頭に準備している」

 -今後、分散開催が定着する可能性は。

 「夏は開放的になれる季節とされてきたが、猛暑やゲリラ豪雨におびえる近年は、健康的とは言い難い。1年で過ごしやすい貴重な時期である春開催が成功すれば、東北で新しいスタイルが生まれるかもしれない」

 -回を重ねるごとに来場者は増えています。地元住民への浸透の実感は。

 「復興の進み方は複雑だ。震災特需が経済を押し上げた面もあり、その波が沈んでいるところもある。新しく商店街ができても、人が戻ってくるわけではない。一筋縄ではいかない多種多様な思いがあるが、少しずつ人々に伝わっているのではないか」

 -29日にミュージシャンの桜井和寿さんと音楽ライブを行います。

 「3月11日、テレビの音楽番組を通して石巻市荻浜でミスターチルドレンの曲『花の匂い』を演奏し、人々に気持ちが広まっていく感触があった。犠牲者に思いを寄せる人と、自分たちの思いが響き合うことで、『利他と流動性』を体現できる場にしたい」

[こばやし・たけし]バンド「マイ・リトル・ラバー」の元メンバーで、ミスターチルドレンなど数多くのアーティストをプロデュース。2003年に非営利組織「ap bank」を設立し、環境保護や東日本大震災の被災地支援に取り組む。62歳。新庄市出身。

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