河北春秋(8/18):歌人の与謝野晶子は短歌ばかりでなく時事問…

 歌人の与謝野晶子は短歌ばかりでなく時事問題に関する評論も数多く書いた。1918年から20年まで世界的に流行したスペイン風邪についても幾つかの文章を新聞に寄せている▼「政府はなぜいち早くこの危険を防止するために(中略)多くの人間の密集する場所の一時的休業を命じなかったのでしょうか」。国の対策の遅れに怒り、さらに「盗っ人を見てから縄をなうというような日本人の便宜主義」と批判した▼国内で約40万人が死亡したという感染症。晶子は「自己を守ることに聡明(そうめい)でありたい」と書き、家族と予防注射を打ったり、常にうがい薬を使ったり、子どもに学校を休ませたりした。子どもたちの命を守るのに必死だったのだ▼対応がいかにも鈍く不徹底な政府への批判、生命を軽んじていると見える多くの人々への違和感。1世紀前の晶子の文章は、現在の新型コロナ感染症にも通じるのでは-。近刊の『文豪と感染症』に収録された文章を読んでそう感じた▼政府は緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の対象地域の追加を決めた。新規感染者と重症者が急増中の現在の状況では当然だろう。そして、改めて問われるのは私たちの行動。晶子の「自己を守ることに聡明でありたい」という言葉が今なお生きる名言として心に響く。(2021・8・18)

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る