山形の和牛、一貫生産へ 繁殖牛増やし経費削減

繁殖牛を飼育するベルファームの牛舎
山形県が繁殖牛の簡易放牧の実証実験を始めた西川町の放牧場。電気柵で囲い、逃げ出すのを防ぐ(県提供)

 山形県内の和牛生産農家で子牛を出産する繁殖牛の飼育頭数が急増している。高齢化と東日本大震災などで廃業する繁殖農家が宮城県などで相次ぐ中、買い付けた子牛を肥育する従来の生産方法から転換。繁殖から出荷まで一貫して自前で行うことでコスト削減を図るとともに、「山形生まれ」の和牛としてブランド力向上を目指す。県も技術指導などで後押しする。(山形総局・原口靖志)

子牛の価格高騰で転換

 尾花沢市の畜産業ベルファームは2018年、15頭いた繁殖牛を一気に約100頭まで増やした。市内で新たに牛舎を取得し、飼料となる牧草地約40ヘクタールを確保。社員10人の半数の5人が担当として出産などの世話を行う。

 以前は宮城県美里町のみやぎ総合家畜市場で買い付けた子牛を主に肥育していた。昨年は出荷した肉牛約200頭のうち、繁殖牛から誕生したのは半分近くの90頭。高橋昭社長(58)は「どの市場でも繁殖農家が高齢化し、あと何年続けられるか分からない。持続可能な経営をするため、今後は一貫した飼育の体制構築が欠かせない」と語る。

 県によると繁殖牛の導入は村山地方で盛んに進み、昨年は1228頭と16年の618頭から4年間で倍増した。県の担当者は「これだけ伸びているのは全国的に珍しい」と言う。近隣の宮城、岩手、福島各県で子牛を買い付ける傾向がある同地方での変化。背景には子牛の価格高騰がある。

 子牛の価格は10年の1頭39万円から16年に81万5000円まで上昇。昨年も68万9000円と高止まり傾向が続く。高齢化に加え、震災による津波被害や東京電力福島第1原発事故の放射能汚染で稲わらが使えなくなり、これを機に廃業する農家が相次いだ影響が出た。高橋社長も「子牛は40万円程度なら買い付けた方がコストが安いが、今後の価格の傾向が想像つかないことで(一貫した飼育を)決断した」と明かす。

 繁殖牛は多くの草を餌で与える必要があるなど、肥育牛の飼育と異なり、導入した農家の労力が増す課題がある。県は今年7月、西川町の放牧場の一角を電気柵で囲って繁殖牛を放牧する「簡易放牧」の実証実験を始めた。牛舎の近くなど比較的狭い土地でも放牧でき、低コストかつ施設整備も容易で省力化が期待できるという。

 県の担当者は「山形で生まれ育った牛を増やすことで、ブランド力の強化を図りたい」と先を見据える。高橋社長も「自分たちが出荷したい牛を育てやすくなる。続けるうちに強みになる可能性はある」と意気込む。

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