河北春秋(10/7):中学時代、尊敬する担任の先生から「絵の才…

 中学時代、尊敬する担任の先生から「絵の才能がない」と断言された。別の生徒のうまさにも圧倒され、絵に対するコンプレックスは癒やされないままだったという▼卒業後、家業の理髪店を手伝いながら漫画家を志す。ひらめいたのはプロダクションによる「分業制」。手塚治虫さんのような天才でないのなら、脚本や演出、作画などそれぞれエキスパートが担当すれば完成度が高くなると考えた。多くのヒット作の礎になった▼84歳で亡くなった劇画家さいとう・たかをさん。半生をつづった『俺の後ろに立つな』で振り返っている。子どもの頃から大の映画好き。「映画に置き換えると、いかなる難問もすらすらと解ける」。カメラワークのようなこま割りで読者を魅了した▼『ゴルゴ13』は政財界にもファンが多い。さぞ国際情勢に詳しいのだろうと思いきや、知る情報は報道の範囲内だったという。逆に知識がない方が脚本家に注文を付けやすく「無知の強みでストーリーをつめていく」手法。これもまた天才肌のなせる業▼冒頭の絵に駄目出しをした恩師は「東郷先生」。『ゴルゴ』の主人公デューク東郷の由来だ。敬愛してやまなかったようで「先生の一言が事あるごとによみがえる」と記す。希代の劇画職人を生んだ秘密の一つだろう。(2021・10・7) 

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