社説(11/2):村井宮城県政5期目へ/「聞く力」 見つめ直す4年に

 任期満了に伴う宮城県知事選は10月31日に投票が行われ、無所属で現職の村井嘉浩氏(61)が大差で新人候補を下し、5期(1969~89年)務めた故山本壮一郎氏以来となる5選を果たした。

 前回(2017年)に続く衆院選との同日選になり、出遅れ気味の新人候補と一対一の構図もほぼ同様だった。投票率は56・29%で3・00ポイント上昇。村井氏にはこれ以上ない展開となったが、得票は前回の約82万票から約68万票に減り、対立候補は約18万票から約37万票に倍増した。

 日程決定から約3週間の「超短期決戦」となり、今回もダブル選の国政論戦に県政課題がほぼ埋没した感が強い。有権者は県政の継続を是認したが、多選による弊害などに目を向け、記名を見送った約14万人の存在を村井氏は重く受け止めるべきだろう。

 4期目の村井県政は、変質の兆しが色濃い4年間だったとの見方が少なくない。県独自の新税「宿泊税」の導入、県美術館(仙台市青葉区)の移転構想は業界団体、市民団体などに加えて県議会や県庁内からも反発を招き、撤回に追い込まれた。

 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働同意や上下水道と工業用水の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」、仙台医療圏の病院再編などは賛否が分かれたままだ。

 河北新報社などが告示前に実施した県民意識調査では、女川2号機の再稼働への地元同意について6割弱が否定的な考えを示し、県が来春の開始を目指す水道事業の新たな方式は「評価しない」との回答が約4割に上った。

 かねてあった独断専行との指摘に加え、強引な進め方や説明不足が目立つようになった。民意をすくい上げる手法に丁寧さが欠けており、支持母体の自民党を中心とした古巣の県議会を過度に向いている印象を受ける。

 4期16年に及ぶ経済分野の実績と、東日本大震災後の復旧復興を率いたリーダーシップは高く評価されるべきだろう。ただ、自動車産業の集積などを進めた「富県戦略」、震災後の「創造的復興」に続く新たな県政の展望をひらくキーワードは見えてこない。

 村井知事が最大の持ち味とする「笑顔」も、最近の街頭演説や各種映像からは明るさが薄れ、険しい表情を見る機会が増えた。かつて野党系県議が評した「笑ってごまかす村井県政」との批判は、異論に対するしなやかな受けの強さも象徴する名言だったが、久しく聞かなくなった。

 「県民が主役の県政を目指す」と宣言し、初当選した05年に掲げた「県民党」は、前回と今回の選挙戦で引っ込めた形になっている。幅広い県民の声が耳に届いているか。長期政権の慢心が「聞く力」をさび付かせていないか。集大成となる20年に向け、初心に立ち返ってほしい。

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